【おすすめ作家】加納朋子の魅力とおすすめ作品を紹介します!

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 みなさんこんにちは、らくとです。

 みなさん、「加納朋子」という作家さんをご存じでしょうか?

 加納朋子さんは、日常の謎を得意とするミステリー作家さんです。大衆的な認知度はそれほど高くないかもしれませんが、ミステリー好きの中では知っている人も多いのではないでしょうか。私は彼女の作風や世界観が大好きで、お気に入りの作家さんのうちの一人です。

 この記事では、加納朋子さんという作家さんについて、その魅力とおすすめ作品について語りたいと思います。

加納朋子とは?

 まずは、加納朋子さんという作家さんについて、ざっと説明をしたいと思います。

 彼女は、1992年に、「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞を受賞し、作家としてデビューしました。(ちなみにこの「鮎川哲也賞」というのは、東京創元社が主催する公募のミステリー新人賞で、レベルの高い新人を今でも発掘しています。)そして、1995年には「ガラスの麒麟」で、日本推理作家協会賞(短編および連作短編部門)を受賞しています。(ちなみにこの日本推理作家協会賞というのは、とても格式高い賞で、「推理作家ならみんなほしい」といっても過言ではないすごい賞です。)

 上の経歴から見ても分かるように、彼女はミステリ-作家です。しかし、ミステリーの中にもいろいろジャンルがあるのですが、彼女が得意としているのは、その中でも「日常の謎」と呼ばれるジャンルです。名前通り、日常の中で起こる不思議なことの真相を推理するという、かなり緩めのミステリージャンルです。ミステリーというと、殺人だの誘拐だのと物騒なイメージがあるかもしれませんが、この「日常の謎」は別名「人の死なないミステリー」とも呼ばれるように、そういった物騒なことはなく、ただほのぼのと読めて心温まるものが多いので、普段ミステリーを読まない人にも受け入れられやすいジャンルだと思います。
 そして今回紹介する加納朋子さんは、この「日常の謎」の名手なのです。

 また、彼女は2010年に急性白血病と診断され、厳しい抗がん剤治療を経て、弟さんからの骨髄移植を受けることで、無事に生還しました。そして今も作家活動を続けていらっしゃいます。その闘病生活を描いた本、「無菌病棟より愛を込めて」を2012年に出版されています。

 ちなみに、豆知識ですが、彼女の旦那さんは同じく推理作家の貫井徳郎さんです。彼は社会派を得意としていて、代表作に「乱反射」や「慟哭」などがあります。ジャンルは違うといえどお二人とも質の高い作品の多い推理作家さんで、お似合いのご夫婦だな、と思います。

加納朋子の魅力

 では、加納朋子さんの作品はどんな点が魅力なのでしょうか?

 ここからは、私が思う加納朋子さんの魅力を2つの点から語りたいと思います。

1.「日常の謎」の名手

 まず一つ目は、日常の謎の名手であること、です。これについては、加納朋子さんについての説明の部分で軽く書きましたよね。

 「日常の謎」または「人の死なないミステリー」。日常の中の些細な謎を推理していくこのジャンルは、殺伐とした気持ちにならずに、ほのぼのと読めることから、多くの人に受け入れられやすいミステリージャンルだと言いました。しかし、個人的には、意外と難しいジャンルだと思うのです。ただ書くのが難しいというよりは、質の高いものを書くのが難しい、というべきでしょうか。なぜかというと、謎の些細さの加減やストーリー設定が上手くないと、読んでいて退屈なものになってしまいがちだからです。
 殺人事件や物騒な事件が起こる小説というのは、少なくとも退屈はしませんよね。それに比べると「日常の謎」というのはやはりインパクトや面白みに欠ける部分があります。些細な謎、といいつつ、あまりにも些細すぎたらつまらない。それに、ただ謎を掲示してそれを解くだけではあまりよくありません。その謎には、背景になんらかのストーリーがなければなりませんし、それは読者の心に残るようなものでなくてはいけません。日常の謎というのは意外と難しいのです。
 その点で、「加納朋子さんは上手いなあ・・・」、と彼女の作品を読む度に思うのです。
 全部が全部というわけではないのですが、彼女の作品には「日常の謎」が多いです。けれど私は、読み終えて「物足りない」と思ったことは全くなく、むしろいつも充足感でいっぱいになります。加納朋子さんの日常の謎は「ちょうどいい」ものが多いのです。重すぎず、かといって軽すぎるわけでもなく、ときにミステリーとしてあっと驚かされるような仕掛けもあり、そして一つ一つの謎の背後にはしっかりと温かいストーリーが作り込まれています。
 日常の謎ながら、しっかりと読み応えがある、それが彼女の作品の魅力の一つです。

2.唯一無二の世界観

 二つ目は、作品に唯一無二の世界観がある、ということです。

 「唯一無二の世界観がある」というのはどういうことなのかと問われると難しいのですが、簡単に言うならば、作者の名前を伏せられた状態で作品を読んでも、「きっとあの作家さんの作品だろうな」と分かる・・・そういう作家さんは「唯一無二の世界観がある」と言えるのではないでしょうか。なんというか、ストーリーやキャラクター、言葉の選び方、そのセンス、その作品を通して見えてくる考え方、伝えたいこと・・・そういったものに「その人らしさ」があり、それがその人の書いたあらゆる作品の中で一貫されている。そういう「世界観」を持った作家さんはけっこういらっしゃいますが、加納朋子さんもその一人だと思います。

 加納朋子さんの世界観を一言で言い表すと「温かい」だと思います。この世界に生きる全ての人々に優しい眼差しを注いでいるような、そして、ときにちょっぴり不思議な奇跡を起こしてそっと助けてあげるような、そんな温かい作品が多いです。きっと作者である加納朋子さん自身がとても優しい人であり、そしてこの世界を、そこに生きる人々を愛しているのだろうな、と、彼女の作品を読むとそう思えます。

 加納朋子さんの本を読むと、心がほんのりと温かくなります。悪人があまり出てこないですし、哀しくなったり腹が立ったりするような展開もあまりなく、あったとしてもそのまま話が終わってもやもやするということはほぼありません。読み終えるときには、温かい気持ちで笑顔で本を閉じられるような、そんな作品ばかりです。個人的に少しご都合主義というか、ちょっと話が上手く行きすぎてるのではないか、そんな風に思ってしまうような展開がけっこうあるのですが、彼女の作品を何冊か読むうちに、そういうところもまた加納朋子さんらしいな、と思うようになり、私は気にならなくなりました。

 また、余談になりますが、加納朋子さんの作品の表紙は十日市たけひろさん(旧名・菊池健さん)というイラストレーターさんが手がけることが多いのですが、彼のイラストは本当に加納朋子さんの作品の世界観にぴったりなんです。彼の手がけている表紙なら思わず手に取ってしまうほど好きなイラストレーターさんの一人です。

おすすめ作品

 加納朋子さんの作品の魅力は上手く伝わったでしょうか。

 ではここからは、加納朋子さんの作品の中で私のおすすめを12冊、紹介したいと思います。

モノレールねこ

 まず紹介するのは、「モノレールねこ」です。

 小学生の僕は、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。しかし、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが・・・表題作の「モノレールねこ」ほか、心温まる短編8つを収録。

 個人的に、加納朋子さんらしさのぎゅっと詰まった短編集、といえばぱっと頭に浮かぶのがこれです。一応謎のようなものが用意されている短編もあるのですが、全体的に、ミステリー味はあまり強くありません。この世界で生きる誰かの日常や、その中で起こるささいな奇跡の瞬間を切り取った、そんなほのぼのとして心温まる8つの短編が収録されています。基本的に明るい雰囲気で、でもほろっと泣ける、そんな作品ばかりです。
 私のお気に入りは表題作の「モノレールねこ」と、「マイ・フーリッシュ・アンクル」です。

少年少女飛行倶楽部

 次に紹介するのは、「少年少女飛行倶楽部」です。

 中学生になった海月は、幼なじみの樹絵里に誘われて「飛行クラブ」に入部する。クラブの目的はそのまま、「空を飛ぶこと」。変人の部長・神(じん)を始めとした飛行クラブのメンバーたちは、空へ舞い上がれるのか?

 こちらは、ミステリーではなく、純度100%の青春小説となっています。個人的に私が大好きな作品です。ただ切実に「空を飛ぶ」というたった一つのことを目指す神部長と、それに影響されて徐々に「飛びたい」と思い始める他のメンバーたち。本気で成し遂げたい何かががあるというのはとても眩しいことだし、しかもそれが、誰もが一度は憧れるであろう、でもその多くが憧れるだけで終わるであろう「空を飛ぶ」ということなのも夢があっていいな、と思います。さて、果たして彼らは空を飛ぶことができるのでしょうか?ぜひ、見届けてあげてください。

沙羅は和子の名を呼ぶ

 次に紹介するのは、「沙羅は和子の名を呼ぶ」です。

 平凡な会社員・元城一樹の一人娘・和子の前に姿を現した不思議な少女・沙羅。その名前が蘇らせる、消し去ったはずの過去。やがて、今の世界とあり得たはずの別の世界が交錯しはじめて・・・表題作を含む珠玉のミステリ短編集

 これはミステリーとファンタジーが上手く融合した短編集です。加納朋子さんらしい優しさはしっかりとありつつ、他の作品に比べると雰囲気がシリアスで、そして、同時にどこか儚い感じのする美しい短編ばかりが揃っています。上手く言えませんが、何だか手触りのよい上質な絹が全体にふわっとかけられているような、そんな上品さが全体に漂っています。

 私のお気に入りの短編は「黒いベールの貴婦人」と表題作である「沙羅は和子の名を呼ぶ」です。

いちばん初めにあった海

 次に紹介するのは、「いちばん初めにあった海」です。

 堀井千波が引っ越しの最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その中から未開封の手紙が・・・。差出人は「YUKI」。覚えのない名に戸惑う千波だが、さらにその手紙の内容は謎めいていて・・・。

 こちらも加納朋子さんにしては少し内容が重めとなっていますが、それでも、やはり彼女特有の優しさによりその重さは調和されており、ときに心を痛めながらも、それでもじんわりと心に温かさが沁み入るような、そんな気持ちで読み終わることができます。あと個人的に、この作品に対して私が感じるのは「懐かしさ」です。かなり前に読んだから、というだけではない、そこはかとない懐かしさ、切なさのようなものが、物語全体にふわりと漂っており、その雰囲気がすごく好きな本です。

ささらシリーズ

 次に紹介するのは、「ささらシリーズ」です。「ささらさや」「てるてるあした」「はるひのの、はる」と全部で3冊刊行されています。「はるひのの、はる」のあらすじに最終巻だと書かれていたので、すでに完結していると見て良いでしょう。私が大好きなシリーズです。

 3冊に共通しているのは、「佐々良(ささら)」という街が舞台であること。そして、ミステリーとファンタジーが上手く掛け合わされたストーリーであること。また、主人公は3冊ともそれぞれ違う人なのですが、全く別の話というわけではなく、3冊とも登場人物もある程度共通しており、シリーズを通して一つの物語のようになっています。ですので、上記の順番通りに読むのがベストだと思います。

 では、早速1冊ずつ紹介していきたいと思います。

ささらさや

 事故で夫を失ったサヤは、赤ん坊のユウ坊と佐々良の街へ移住する。そこでは、不思議な事件が次々に起こる。しかし、そのたびに亡き夫が他人の姿を借りて助けに来てくれるのだ。ゴーストの夫とサヤの永遠の別れまでの日々を描く、連作ミステリ。

 夫を亡くして、まだ赤ちゃんのユウ坊を抱いて、途方に暮れながら、たった一人で見知らぬ街へやって来たサヤ。彼女は誰よりも優しいですが、少し頼りない。そんな妻を心配した夫は幽霊となり、他人の姿を借りてしばしば彼女の前に現れる・・・そんなストーリーです。そして、サヤの周りには、幽霊の夫のみならず、おっせかいで、でも温かく心強いご近所さんたちがたくさん。そんな人々に囲まれながら、守るべきものを持ったサヤは、少しずつ強くなっていきます。そして、やがて訪れるのは、夫との今度こそ永遠の別れ。

 明るくユーモアがあるのに、ふとした言葉にほろりと泣ける・・・しかしそれは悲しい涙ではなく、温かい涙です。人の助け合いの温かさや、悲しみを乗り越え、前を向いて生きていくことのできる、人の強さ・・・物語を通して、それを感じることができる、素敵な一冊です。

てるてるあした

 親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という街を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすようになったのはおせっかいなお婆さん、久代だった。口うるさい久代に、わがままな照代は心を開かない。そんなある日、照代の元に差出人不明のメールが届く。

 今作の主人公は、奔放な親のせいで不遇な生活を送ることとなった中学生の照代。前作の主人公・サヤは、今度は主人公の照代を周りで支える人たちの一人として登場します。

 正直に言って、個人的に、このシリーズの中どころか、加納朋子さんの作品全ての中でも最も好きな作品といっても過言ではありません。私がこの作品にこれほど思い入れがある理由としては、照代が少し自分に似ているからだと思います。自分の容姿や性格にコンプレックスを抱える照代は、少しひねくれていて、可愛げのない女の子。彼女には嫌いなものが多く、でもそれは嫌われるなら嫌ってやる、というようなもので、それゆえ見ていて痛々しく、でも同時に、自分にどこか似ている、とも思いました。

 そんな照代が、久代さんを始めとする佐々良の街の人々との生活を通して、そして、その中で起こる不思議な出来事を通して少しずつ変わっていき、そして最後には向き合うべき問題ときちんと向き合って、いろんなことを許せるようになるのです。その成長に、希望と元気をもらいました。

はるひのの、はる

 大きくなったユウスケの前に、「はるひ」という名の女の子が現れる。初対面のはずなのにどこか親しげなはるひは、その後も、様々な無理難題を押しつけてくる。しかし、彼女の頼み事は、すべて「ある人」を守るためのものだった。「ささら」シリーズ最終巻。

 今回の主人公は、ユウスケ。そう、「ささらさや」の主人公・サヤの赤ん坊、ユウ坊です。ささらシリーズを最初から読んでいる人からすると、「あのユウ坊がこんなに大きくなって・・・」という感慨とともに、一抹の寂しさのようなものも感じながら読みました。

 ユウスケの前に現れた謎の少女・はるひ。彼女の正体と、それまでの頼み事の意味が最後に分かったとき、これまでに感じていた違和感やモヤモヤなどがさっと霧散し、心の中に温かさが押し寄せてきます。少々ややこしい話ではあるのですが、伏線回収が素晴らしく、ささらシリーズの中ではミステリーとして最も上手くできている作品だと思います。

 ささらシリーズの最終巻に相応しい、壮大で、感動的で、そして哀しくも温かい、素晴らしい終わり方でした。

ガラスの麒麟

 次に紹介するのは、「ガラスの麒麟」です。

 「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えていた彼女の内面の闇。危ういまでに繊細な少女たちの心のふるえを温かな視線で描く、連作ミステリ。

 日本推理作家協会賞を受賞した作品です。「殺された」とか「通り魔」とかのあらすじの物騒なワードからも分かるように、加納朋子さんにしてはかなりシリアス内容となっています。他の作品をある程度読んでから読むと、雰囲気の違いに少し戸惑うかもしれません。けれど、読んでいれば、やはり加納朋子さんの作品なのだということを示す温かさを感じることができます。

 通り魔に殺された女子高生、安藤麻衣子。彼女の周りの人々に起こる6つの事件を連作短編形式で描いています。女子高生というと華々しいイメージが最も強いですが、同時に最も繊細な年頃であるとも言えます。一見明るく楽しそうに見えても、その内面には、ガラスのように脆くて、割れたら鋭く危ない何かを抱えている子も多いでしょう。心細く、傷つきやすいくせに、誰かに素直に気持ちを打ち明けることもせず、一人で抱え込んでしまう・・・覚えがある人もいると思います。この作品は、そんな少女たちの心に、そっと寄り添うように描かれています。また、日本推理作家協会賞を受賞していることからも分かるように、連作ミステリーとしてもとても優れている一冊です。

トオリヌケキンシ

 次に紹介するのは、「トオリヌケキンシ」です。

 高校に入ってから、不登校・引きこもりになってしまったある少年。ある日彼の家に、一人の少女がやってきた。少女はかつて少年に助けてもらったことがあるという・・・『トオリヌケ キンシ』。他人になかなか分かってもらえない困難に直面した人々に起こる人生の奇跡を描いた短編集

 こちらも加納さんらしい温かさのぎゅっと詰まった短編集となっています。どの話も面白く、そしてテーマにも統一感があり、全体的に満足度の高い作品でした。

 ただ面白いだけではなく、「共感覚」や「相貌失認」など、私があまり知らない、そして、おそらく当事者にしか分からないであろう世界について、そしてその中で生きる人々について、加納朋子さんの温かい眼差しを通して少しだけ知ることができて、ある意味では勉強になった一冊でもあります。この短編集に出てくる人々は、みな、少し特殊な困難に直面しており、それは実際に直面しなければ理解できないようなことで、でも、私たちの人生、または私たちの周りの人の人生において突然起こるかもしれないことでもあります。心が温まりつつ、考えさせられもする、そんな6つの話が入っています。

二百十番館にようこそ

 次に紹介するのは、「二百十番館にようこそ」です。

 就活で挫折して以来ずっと実家にひきこもっている俺に転がり込んだ伯父の遺産は、離島に建てられた館丸々一棟。浮かれて現地へ見に行った俺は、親から告げられる――「そこで一人で生きていけ」。突然の強制自立生活。金銭問題解決のため、俺はとりあえず館の下宿人を募るが・・・。

 ニートをしていた主人公が、突然離島で、似たような仲間たちとともに自立生活を始め、人とのリアルな交流を通じて少しずつ人生に活気を取り戻していくお話です。主人公はニートで、かなり崖っぷち、もっとはっきり言うならお先真っ暗、そんなまあまあに重い状況ですが、物語は暗いものではなく、むしろポップでコミカル。頼りなくも愛すべきポンコツニートたちの姿に、くすっと笑いながら思わず応援したい気持ちになり、元気がもらえます。

 実際にはこんな上手く行かんだろうなあ・・・とは思いますが。でも、加納朋子さんの作品では、不思議と、この世界の優しさや温かさを素直に受け取ることができます。元気を出したい人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

空をこえて七星のかなた

 次に紹介するのは、「空をこえて七星のかなた」です。

 「南の島へ行くぞ」突然の父の言葉で石垣島へ旅することに。でも、あまり気は進まない。去年までは母も一緒だったのに・・・(「南の十字に会いに行く」)。廃部寸前のオカルト研究会、天文部、文芸部。生徒会に必死で存続を訴えると、「じゃあスペミス部ってことで。」ととんでもない提案が・・・。(「箱庭に降る星は」)。星にまつわる七つの物語。

 加納朋子さんらしさがいっぱいに詰まったミステリー短編集でした。今回は「星」がテーマになっており、どの話も宇宙や星がどこかしらに関係していて、その統一感がよかったです。そして、短編集になっているのですが、どの話も、加納朋子さんらしい温かさに満ちたオチが用意されていて、また、ときにはあっと驚くような仕掛けもあり、とても楽しめました。

 また、読み終わった後の余韻が心地よい作品でもあります。読み終えたとき、衝撃ながらもとても爽やかな気持ちで、「やってくれたな」と、思わず笑ってしまうような、同時に心がじんわりと温かくなるような、そんな最高の読後感でした。改めて、加納朋子さんのすごさを実感した作品でした。

無菌病棟より愛をこめて

 次に紹介するのは、「無菌病棟より愛をこめて」です。

 急性白血病の告知を受けて、仕事の予定も、妻・母としての役割も、全てを放りだして突然の入院、抗がん剤治療の開始。たくさんの愛と勇気、温かな涙と笑いに満ちた加納朋子の闘病記

 前述したように、加納朋子さんは2010年に急性白血病の診断を受け、闘病の末、弟さんから骨髄移植を受けたことで生還し、現在も作家活動を続けていらっしゃいます。この「無菌病棟より愛をこめて」は、その闘病の日々を綴った記録です。

 急性白血病というと、「血液のガン」とも言われる、命に関わる深刻な病気です。抗がん剤治療をはじめとした闘病の生活はきっと、経験しなければ分からない、想像を絶するような辛さだと思います。いつも明るくて温かい物語を届けてくれる加納朋子さんだからこそ、この闘病記は読むのが少し怖くもありました。流石の加納さんでも、いつものように世界のことを優しい目では見られないだろう、と思ったからです。けれど、読んでみると分かりました。加納朋子さんはどんな状況でも、優しくて温かく、ユーモアもあって明るく、何より愛を忘れない人でした。もちろん読んでいるだけで辛いような治療の描写などもありましたが、それでも、その根底には変わらない加納朋子さんらしさがありました。

 もちろん、こんなに明るく記録してはいるけれども、実際にはこんなに明るくなかったかもしれません。それは当然のことで、それでも、できる限り明るくあろうとしたのだろうということが伝わって来ました。やっぱりこの方はすごい方だと思うし、それをこうやって記録に残してくれたこと、そして何より、諦めずに生還して、今も温かい作品をたくさん生み出し続けてくれていること、それに感謝しながら読みたくなる、そんな本です。

 加納朋子さんファンにはぜひ読んでほしい一冊です。

まとめ

 いかがでしたか。

 この記事では、私の大好きな作家、加納朋子さんのおすすめ作品を12冊、紹介させていただきました。加納朋子さんの作品の温かさと優しさは唯一無二のものだと思います。

 もしこの記事で気になる本がありましたら、ぜひ手に取って見てください。

では、ここらで。
よい読書ライフを!

 

 

 

 

 

 

 

 

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