死について考えさせられる小説11選

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 こんにちは、らくとです。

 みなさんは「死」というものについて考えたことがありますか

 人間にとって、考えても考えても尽きない永遠のテーマとも言える「死」。普通に生きているときにはとても遠いもののように感じられるかもしれません。特に若い人にとってはそうでしょう。けれど、実際には、死というのは、この世に生まれた以上は絶対にいつかは訪れるものであり、そして、それがいつ訪れるか誰にも分からないという点で、とても身近なものなのです。

 では、死を身近に感じるときというのはどういうときでしょうか。例えば、自分自身が死の危険にさらされたとき、大切な人が死の危険にさらされたとき、または、実際に亡くなってしまったとき。一人一人は見知らぬ人でも、多くの人が一度に亡くなってしまうような事故や事件が起きたとき。そういうとき、ふっと死が身近に感じられて、突然怖くなったりした経験がないでしょうか。

 そういうとき、私たちは「死」について深く考えます。死ぬというのはどういうことなのか。自分が死ぬのはいつで、そしてそれはどんな死に方なのか。いつか訪れる死のために、自分は何をすべきか。私たちが死のことを知りたがったり、死について考えたりするのは、いつか来る死への恐怖を和らげるためなのではないかな、と私は思っています。

 長くなりましたが、この記事では、そんなふうに「死」について考えたいとき読んでほしい小説を11冊、紹介したいと思います。

死について考えさせられる小説11選

 早速紹介していきたいと思います。

その日のまえに:重松清

 まず紹介するのは、重松清さんの「その日のまえに」です。

 僕たちは「その日」に向かって生きてきた――――。ずっと続くはずだった毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前に、いったい何ができるのだろうか。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、生と死、そしてその中にある幸せを見つめ、連作短編集

 重松清さんにはこれまでも何度か泣かされてきましたが、この作品もそのうちの一冊です。身近な人、大切な人の死をテーマにしており、読んでいて少し辛くなってくるような部分もありました。当たり前のように隣にいると思っていたのに、ある日告げられる、あまりにも少ない残り時間。別れまでの辛く、けれども大切な時間・・・。大切な人を見送り、けれども続いていく日々を生きていかなければならない残された人々の哀しさ、苦しさを描いており、流石に涙無しには読めません。そして同時に、今隣にいる人との時間がどれほど貴重で大切か、それを私たちに実感させてくれます

 私もこれまでに大好きな人たちを何人か見送ってきたし、これからも見送ることになるでしょう。そのときのことを想像だけで絶望しそうなほどな哀しさを感じますが、それでもいつか必ずやって来るその瞬間のために、今を大切にしようと思える小説です。

夏の庭:湯本香樹実

 次に紹介するのは、湯本香樹実さんの「夏の庭」です。

 小学6年生の夏休み、僕らは、町外れに住む、生ける屍のような一人の老人を「観察」しはじめた。人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。しかし、老人は日増しに元気になっていくようだ。いつしか彼らの「観察」は「交流」へと姿を変えていく。世界各国で翻訳された、不朽の名作。

 私も小学生のときにこれを読んで、読書感想文を書きました。私自身まだ子どもでしたが、はっとするようなフレーズにいくつか出会い、私なりに死やそれ以外の様々なことについて必死で考えながら文章を書いたことを覚えています。

 まだ知らないことが多すぎる彼らが、小学6年生の夏、興味を持ったのは「死」でした。人が死ぬ瞬間を見たい・・・その不謹慎とも言える、けれども子どもながらの純粋な好奇心が、彼らと老人を引き合わせ、生涯忘れられないようなひと夏の交流へと繋がっていくのです。大人になってから思うのですが、小学生の夏休みって、どうしてこんなに思い出すと切ないような、胸がぎゅっとなるような気持ちになるのでしょうか。たったひと夏でここまで多くのことを学び、成長できていたあの頃がとても懐かしく、眩しく感じられます。

 人が死ぬというのは、そして生きるというのはどういうことなのか。小学生にはもちろんですが、大人になっても、何歳になってもふっと思い出して読み返したい、そんな一冊です。

青空のむこう:アレックス・シアラー

 次に紹介するのは、アレックス・シアラーさんの「青空のむこう」です。

 交通事故で突然死んでしまった少年・ハリー。彼はゴーストとして再び地上に降りてきた。〈彼方の青い世界〉に行く前に、もう一度大好きな人たちに会い、やり残したことを片付けるために。

 私の大好きな作品のうちの一冊です。個人的に、話の内容はもちろんなんですが、表紙が大好きなんです。真っ青な空の上から降りてくる一人の少年・・・読んだ後に改めて表紙を見返すと、胸がぎゅっとなります。

 亡くなった少年自身を語り手に、彼が自分の死を受け入れ、やり残したことを自分で片付けて、本当に遠いところへ行ってしまうまでの日々を描いた小説です。死後の世界を描いた小説ってあまりない気がするので、そこが面白いな、と思いました。この世に残してきた大好きな人たち、まだやりたかったたくさんのこと、そして大きな後悔。読んでいて、もし自分がハリーと同じ立場に立たされたらどうするかな、と考えると、とても耐えられないだろうな、と思いました。ハリーはとても強い子だと思います。

 生きていると気付けない、当たり前だけど幸せなこと。そばにいるときには気付けない、本当に大切な人たち。読むと、自分の周りにあるもの、いる人を抱きしめたくなる、そんな小説です。

君の膵臓をたべたい:住野よる

 次に紹介するのは、住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」です。

 ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。それはクラスメイトの山内咲良が綴った秘密の日記帳で、そこで僕は、彼女が膵臓の病気により余命いくばくもないことを知ってしまう・・・。大ベストセラーの青春小説。

 こちら、普段本を読まない人でも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。小説投稿サイトから話題になり、2015年、単行本化とともに世間に大ブームを巻き起こした青春小説です。当時学生だったのですが、その人気、話題性のすごさは今でも覚えています。

 人と関わらずに地味に生きてきた僕と、明るくて人気者のクラスメイト・咲良。近くにいながら関わることのなかった二人が、秘密を共有することによって、共に時間を過ごすようになります。いわば死によって始まった、というよりも死を前提とした、期間限定ともいえる関係性。恋人や友達というには少し遠い、でもお互いにどこか特別・・・そんな二人の距離感が何ともいえずよかったです。

 ラストでは、彼らがお互いにどんな存在だったのか、どんな影響を与え合ったのか、それが分かるにつれて胸に込み上げてくるものがあります。「君の膵臓をたべたい」・・・この奇妙なタイトルも、いかにこの作品のタイトルとして相応しかったか分かるでしょう。比較的読みやすい作品ですので、読書初心者や、普段あまり読書をしない人にもおすすめです。

いちご同盟:三田誠広

 次に紹介するのは、三田誠広さんの「いちご同盟」です。

 中学三年生の良一は、同級生で野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美と知り合う。ある日、直美が突然良一に言った――「あたしと、心中しない?」。恋愛と友情、生と死についてリリカルに描いた、青春小説の名作。

 「15歳」というと人生で最も多感な時期といっても過言ではありません。子どもから少しずつ抜けだし、様々なことを自分なりに考えるようになる時期だと思います。けれど、まだまだ子どもなので正しい答えなんて出せるわけもなく、結局悩んで、傷ついて、ときには絶望して・・・そんな年だと思います。この小説も、そんな繊細な年頃の少年少女を描いたものです。病気により死と直面している少女と、その少女を巡る二人の少年の恋愛と友情・・・ありがちといえばありがちなストーリーなんですが、この作品では、大人なようでいてやはり未熟で、でもどこまでも真剣で切実な彼らの十五歳の心を、実に美しく描いています。それは、二度と訪れない美しい瞬間を切り取った一枚の写真のようです。

 個人的に、ラストシーンがすごく好きでした。ぜひ読んでみてほしい一冊です。

世界から猫が消えたなら:川村元気

 次に紹介するのは、川村元気さんの「世界から猫が消えたなら」です。

 郵便配達員の僕・30歳。猫とふたり暮らしの映画オタク。そんな僕がある日、脳腫瘍で余命僅かと宣告される。絶望した僕の前に悪魔と名乗る男が現れて奇妙な取引を持ちかける―――「世界から一つ何かを消す代わりに、一日だけ命を得られる。僕は生きるために、消すことを決めた。

 「世界から何かが消える代わりに、自分が一日長く生きられる」という、かなり斬新な設定で物語が進んでいきます。悪魔が出てきたり、猫がしゃべったりと、現実離れした要素が多いですが、その世界観に上手く入り込めれば、人生の中でも特別な一冊になるはずです。

 「僕」の余命を伸ばすために世界から消えていくものは、いずれも僕のこれまでの人生にゆかりのあるものばかり。それらに結びついて浮かび上がってくる過去の人々や記憶を思い出すことで、彼は自身の人生を振り返っていきます。消えるまでそれほど時間が残されていない僕という存在には、どんな意味があったのか。この世界から何かが消えるというのはどういうことなのか。

 川村元気さんの紡ぎ出す綺麗な文章は、まっすぐに心に入ってきて、何度もはっとさせられました。もし自分がこの主人公の立場だったら、悪魔はこの世界から何を消すのだろうか、そんな風に考えてみても面白い一冊です。

ライオンのおやつ:小川糸

 次に紹介するのは小川糸さんの「ライオンのおやつ」です。

 若くして余命を告げられた雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色の中、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた・・・。

 こちらも余命を告げられた主人公の最期の日々を描いた物語です。ストーリーはとてもベタなのですが、その分とても素直に心に入ってきて、素直な感動を味わえるのがとてもよいです。

 ホスピスという、死がすぐそこにあるようなそんな場所が舞台ですが、かといって暗く鬱々としているわけではなく、ずっと温かさがあります。穏やかな島の景色と、人々との交流、おいしいご飯とおやつの時間・・・死を拒絶するわけではなく、かといって諦めて絶望するでもない、ただただ受け入れて、その上で残された時間を安らかに過ごす。死ぬ恐怖や悲しみではなく、生きていることの素晴らしさ、ありがたさをより感じられるお話でした。いつかやって来る最期のときをこんな風に迎えられたらいいなあ、と思える一冊でした。

心:姜尚中(カン・サンジュン)

 次に紹介するのは、カン・サンジュンさんの「」です。

 「人はなぜ生まれ、死んでいくのでしょうか」青年は、深い悩みを抱えて私の前に現れた。一瞬、わたしは息をのみ、思わずあの子の名前を口走りそうになった・・・。生きる意味を見失った学生とある哀しみを胸に秘めた先生。二人の交流を通して描く、喪失と再生の物語

 あらすじと題名から分かるように、かの有名な夏目漱石の「こころ」をモチーフにして書かれた作品です。フィクションではあるのですが、主人公である「わたし」(=先生)には、作者自身を重ねたのであろうと思われる部分が多くあります。関心を持たれた方は、作者について少し調べてみてもよいかもしれません。

 ある学生が、親友の死に直面したことをきっかけに、死にとらわれ、生きる意味を見失ってしまいます。そんな彼は、先生である「わたし」とメールのやりとりを始めます。震災のボランティアや演劇を通して、彼は生や死という答えのない問いに対して懸命に考え、もがきます。そして、「わたし」も師として彼を導きつつ、彼に影響されていくのです。これを読んだとき、私はこの学生の心の純粋さ、そして真摯さに心を打たれる気がしました。自分の若い時間を使って、こんなにも生や死について真剣に、真っ向から考え続けることって、なかなかできないことだし、ましてやそのために過酷な体験にも自ら飛び込んでいく彼の覚悟に、頭が下がる思いでした。

 内容は少し難しいですが、生や死について深く考えたい人に読んでほしい作品です。

人魚の眠る家:東野圭吾

 次に紹介するのは、東野圭吾さんの「人魚の眠る家」です。

 離婚を予定していた播磨和昌と薫子夫妻に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた・・・病院で彼らを待っていたのは、「おそらく脳死」という残酷な現実。一旦は受け入れるも翻意した二人は、医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。

 この作品は、「死」というものの定義を揺るがしてくる作品です。脳死というのは、すごく簡単にいうと、「心臓は動いているけれど、脳が死んでいる」という状態のことをいうのですが、それを「死」としていいものかどうか、それは医療の分野における大きな課題の一つでもあります。意識がなく、感情もない・・・いわば心がないなら、心臓が動いていても、それはもうその人はそこにいないのと同じこと。他人事ならそんな風に割り切れても、いざ自分の家族が同じ状態になったら、「心臓は動いている」という事実に縋ってしまうかもしれない、という気がします。

 この家族、というよりも母親の薫子の行動は、確かに狂気じみているのですが、その行動の根底にあるのは誰もが理解できる当たり前の感情で、だからこそとても痛々しく、読んでいてとても辛かったです。

 脳死や臓器移植という重いテーマを扱い、「死」について少し変わった角度から考えられる作品です。ぜひ読んでみてください。

ノルウェイの森:村上春樹

 次に紹介するのは、村上春樹さんの「ノルウェイの森」です。

 あれは1969年、僕がもうすぐ二十歳になろうとしていた秋のこと――僕、自殺した親友のキズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。等身大の人物を登場させ、限りない喪失と再生を描いた作品。

 世界中に多くのファンを持つ、日本を代表する作家・村上春樹。その彼のさらに代表作ともいえる作品がこちらです。村上春樹といえば、と聞かれてこの作品をあげる人も多いのではないでしょうか。

 主人公と二人の女性との恋愛模様を通して、生や死という人生のもっと奥深い部分までぐりぐりと入ってような、そんな物語です。少し変わり者でどこか冷めた感じのする主人公。親友のキズキの自殺という出来事が彼を捉え続け、そして彼の心や人格に大きな影響を及ぼしています。迷いや葛藤、哀しみ、寂しさ、傷つくことと傷つけられること、愛すること、そして失うこと・・・彼やその周りの人々の人生に対する姿勢が、唯一無二のセンスに溢れる会話や文章表現で綴られています。独特な表現のように思えて、実は本質を突いているような言葉がたくさんあり、はっとさせられます。

 村上春樹さんの他の作品に比べたら、難解さはそれほど高くないので、読みやすい部類だと思います。しかし、少し性的な表現が多いので、苦手な人は苦手かもしれません。けれど、読まず嫌いをするにはあまりにももったいない作品だと思うので、ぜひ手に取ってみてください。

余命10年:小坂流加

 次に紹介するのは、小坂流加さんの「余命10年」です。

 二十歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にたおれ、余命が10年であることを知る。未来に対する諦めから、死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となく始めた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと誓った茉莉だったが・・・。涙より切ないラブストーリー。

 映画化もされて話題になった作品です。著者である小坂流加さん自身も難病を患っており、この文庫版の編集が終わった直後に症状が悪化し、刊行を待つことなく逝去されました。けれど、彼女の遺したこの作品は読み継がれ、今もなお、そしてきっとこれからも多くの人に感動を与え続けるでしょう。

 この作品はタイトルそのまま、余命10年と宣告されてからの主人公の残りの人生を描いたもの。余命というと半年とか1年とか、わりと短い期間であることが多いのですが、この主人公の余命は10年。この中途半端な長さが、かえって彼女を苦しめたのではないかと思います。10年というと、大抵のことはできる期間なような気がしますが、意外とそうでもないし、できたとしても、10年経ったら強制的に終わりが来て、それ以上未来に繋がることがない・・・その虚しさが伝わってきて、胸が痛くなりました

 残されてしまう相手のためにも、絶対に恋はしない・・・そんな風に誓っていた茉莉ですが、そんな茉莉にある出会いが。そこからは、あまりにも切ないラブストーリーとなっていきます。茉莉の気持ちを考えると心が張り裂けそうな思いがしました。

 作者自身がヒロインと同じ境遇だからこそ、死やそれまでの日々を綺麗に描きすぎておらず、リアリティと説得力があります。ぜひ読んでみてください。

まとめ

 いかがでしたか?

 この記事では死について考させられる本を11冊、紹介しました。

 生きている以上、絶対に避けられない死。いつか来たるべきそれについて、心に余裕のあるときに、少し時間を取って考えてみるのもいいかもしれません。そのときに、この記事を思い出して、参考にしてみてくだされば、幸いです。

 では、ここらで。
 良い読書ライフを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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