夏に読みたい小説17選!

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 みなさんこんにちは、らくとです。
 今年も夏がやって来ました。夏は暑さこそ厳しいですが、同時に美しい季節でもあります。真っ青な空に、そびえ立つ入道雲。青い海に、照りつける太陽。風にさざめく青田。風鈴の澄んだ音。空気を震わす蝉の大合唱。スイカやかき氷、ラムネなどがひやりと喉を通る感触。浴衣姿の人々が行き交う夜の祭り。夜空を彩る花火・・・などなど、夏と言えば浮かんでくる情景が多々あるのではないでしょうか。特に学生には夏休みというものがあるので、特に記憶に残る思い出を作りやすい季節だとも言えます。明るく、あっけらかんとしているようで、意外とノスタルジックな季節、それが夏だと私は思っています。
 この記事では、そんな季節、夏にこそ読んでほしい小説を17冊、紹介していきます。

夏に読みたい小説17選!

 では、さっそく紹介していきたいと思います。

プリズムの夏:関口尚

 まず紹介するのは、関口尚さんの「プリズムの夏」です。

 「わたしはわたしをやめたい」――ネットで見つけた、うつ病の女性の日記。高校3年生の僕は、ふとしたことから、その日記の書き手「アンアン」が、自分が今片想いしている女性・松下さんなのではないかと思い始める。映画館で働く美しい彼女にそんな気配はないものの、証拠が積み重なり、疑いは濃くなるばかり・・・。もし「アンアン」が松下さんなら、僕は彼女を救いたい――少年のまっすぐな思いを鮮烈に描く青春小説
 現実に苦しみもがく一人の女性と、彼女を助けるために奮闘する二人の少年のひと夏の話です。まさに夏に読むにはぴったりの、爽やかでありながら少し切ない小説です。まず、高校生の少年が年上の大人の女性に恋心を抱くというのが少し背伸びした青春という感じでとてもよいです。しかし、その女性は心に大きな問題を抱えています。その重さに戸惑い、自分の幼さを痛感しながらも、何とか彼女を助けようとする二人の少年の純粋でまっすぐな思いに胸を打たれます。ぜひ読んでみてください。

姑獲鳥の夏:京極夏彦

 次に紹介するのは、京極夏彦さんの「姑獲鳥(うぶめ)の夏」です。

 東京・雑司ヶ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20ヶ月も身籠もったままで、その夫は密室から失踪したという。そして、探偵・榎木津の元に、その夫の失踪を調査してほしいという依頼が舞い込んだ。榎木津の学生時代の友人の小説家・関口は、助手として榎木津の調査を手伝うことになるが・・・。古本屋にして陰陽師の男・京極堂が憑物を落として事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾
 私の大好きな百鬼夜行シリーズの一作目であり、京極夏彦さんのデビュー作でもあります。爽やかとは言い難い作品で、夏らしい情景描写もそれほどないのですが、不思議と夏に読みたくなる作品です。この作品を初めて読んだときの衝撃はなかなか忘れがたいものでした。おどろおどろしく不気味で、でもどこか目を離せない・・・そんな魅惑的な一夏の事件の記録を、ぜひ読んでみてください。

夏の庭:湯本香樹実

 次に紹介するのは、湯本香樹実さんの「夏の庭」です。

 町外れに暮らす一人の老人を、ぼくらは「観察」し始めた生ける屍のような老人が死ぬ瞬間を、この目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は高まるばかりだけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ――。いつしか少年たちの観察は老人との交流へと姿を変え始めていく。喪われゆくものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。
 夏休みの読書感想文の課題として定番となっている作品です。無邪気な好奇心から始まった少年3人と老人の交流を描いています。まだこの世界に知らないことが多すぎた頃・・・今よりも長く濃密に感じられた小学生の頃の夏休みの雰囲気が懐かしく胸に蘇ってきます。人が死ぬというのはどういうことなのか・・・子どものうちに読んでも、大人になってから読んでも胸に沁みいる一冊です。

向日葵の咲かない夏:道尾秀介

 次に紹介するのは道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」です。

 夏休みを迎える終業式の日。僕は先生に頼まれ、欠席したクラスメイト・S君の家を訪れた。そこで見たのは、首を吊って死んでいるS君の姿だった。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れ、訴えた。「僕は殺されたんだ」・・・あなたの前に広がる、もう一つの夏休み。
 私の中で、夏関連の作品の中で特に強い印象を残している異色作です。タイトルから想像出来るような爽やかさは一切ありません。ただただ奇妙で、そして薄気味悪いですが、それでも読み進めてしまう、独特な魅力があります。読み終わったときには呆然というか、「なんだこれは」というのが感想でした。王道の夏物語もいいですが、こういったひと味違った夏作品も楽しんでみてください。

夏と花火と私の死体:乙一

 次に紹介するのは、乙一さんの「夏と花火と私の死体」です。

 9歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、一つの死体を巡る、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。彼らは次々に訪れる危機をかわし、大人たちの追及から逃れることは出来るのか?ホラー界を驚愕させた、乙一のデビュー作。
 こちらも爽やかとはほど遠い、背筋のひやりとするような夏物語です。殺してしまった少女の死体を隠すために幼い兄妹が奮闘する話ですが、夏と子どもという爽やかなものと死体というおぞましいものが合わさっているというアンバランスさに、何とも言えず薄ら寒い気持ちになりました。そしてこの物語が誰視点で描かれているのかも、見所の一つです。狂気に満ちた一夏を、ぜひ楽しんでみてください。

スタンド・バイ・ミー:スティーヴン・キング

 次に紹介するのは、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」です。

 行方不明だった少年の事故死体が森の奥にある、との情報を掴んだ4人の少年たちは、「死体探し」の旅に出た―――その苦難と恐怖に満ちた二日間を描き、少年期の特異な友情、そしてそれへの訣別の姿を感動的に描く表題作は、成人して作家となった仲間の一人が書くという形をとった、著者の半自伝的な作品である。
 アメリカの有名な青春映画「スタンド・バイ・ミー」の原作小説です。作者がホラー作家だということもあり、青春物語ではありながら少し暗いというか、ぞっとするような部分もありますが、そこがまたこの小説の味でもあります。アメリカの田舎の夏の情景描写、冒険にわくわくする少年心、子ども時代の特別な友情・・・そして、そんな遠き過去の日々に一人思いを馳せる、大人になった語り手。全体的にエモーショナルな一冊となっています。映画を見た人も、ぜひ原作を読んでみてください。

ひぐらしふる:彩坂美月

 次に紹介するのは、彩坂美月さんの「ひぐらしふる」です。

 公衆の面前で突如姿を消した親子連れ。山の天辺でUFOに連れ去られた幼なじみ。実家に帰省した有馬千夏の身の回りで起こった不可思議な事件は、はたして怪現象か、それとも故意の犯罪か。そして、彼女の前に度々現れる“自分そっくりの幻”の正体とは。ひと夏の青春ミステリー。
 夏に実家に帰省した主人公の身の回りの不思議な事件を描いた連作短編集です。5つの話が収録されていますが、どれもミステリーとしても秀逸ですし、それに加えて事件に関わっている人々の心理描写も見事で、読み応えがあります。また、ところどころ挟まれる夏の情景描写も美しく、夏のミステリーとしておすすめしたい一冊です。
 なお、この作家さん、彩坂美月さんは、今のところあまり有名ではないですが、個人的にこの人の書く青春ミステリーは外れなく面白いと思っているので、本作が気に入ったら、他の作品もぜひ読んでみてください。

真夏の方程式:東野圭吾

 次に紹介するのは、「真夏の方程式」です。

 夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に泊まることになった。翌朝、もう一人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。大人気ガリレオシリーズ第6弾
 舞台が海辺の町ということもあってか、夏色の濃いミステリー小説でした。湯川と少年の不器用な交流シーンが微笑ましかったです。しかし、事件は思わぬ方向へと進んでいきます。謎解きやトリックよりも、事件の背景として描かれる人間ドラマが強く印象に残りました。美しい真夏の海を背景に起こった事件と、見えてくる哀しい真相。映画化もされた真夏のミステリーを、ぜひ読んでみてください。

翼はいつまでも:川上健一

 次に紹介するのは、川上健一さんの「翼はいつまでも」です。

 1960年代、東北の田舎村。野球部の万年球拾いの僕は、ある夜、ビートルズというバンドが歌う、ある曲に出会う。それは僕にとって運命の一曲だった。そして、ビートルズのくれた勇気を胸に、大人の男になろうと自転車で一人旅に出た湖で初恋を知る。爽やかな中学生の青春物語。
 王道の青春!という感じの作品でした。ときは1960年代で、まさにビートルズ世代。あまりイケてるとはいえない青春を送っていた僕は、ビートルズの曲に背中を押され、大人になるための一歩を踏み出す・・・大人と子どもの狭間ともいえる多感な時期の男子を主人公に、大人への反抗や友情、性への興味、そして初恋と様々なことを描いています。少し青臭いところもありますが、男の子の青春をぐっと詰め込んだような、そんな作品でした。ビートルズ好きの人にもおすすめです。

宵山万華鏡:森見登美彦

 次に紹介するのは、森見登美彦さんの「宵山万華鏡」です。

 一風変わった友人と祇園祭に出かけた「俺」は、“宵山法度違反”を犯し、屈強な男たちに捕らわれてしまう。次々と現れる異形の者たちが崇める「宵山様」とは?(「宵山金魚」)。目が覚めるとまた宵山の朝。男はこの繰り返しから抜け出せるのか?(「宵山迷路」)。祇園祭宵山の一日を舞台に不思議な事件が交錯する。現実と幻想が入り乱れる森見ワールドの真骨頂
 個人的に森見さんの作品の中でも一、二を争うくらい好きな作品です。毎年7月に行われる京都の祇園祭の宵山を舞台にした作品です。たくさんの人の熱気と色とりどりの屋台や浴衣。お祭り特有の浮き足だった賑やかな雰囲気が目の前に浮かぶようです。そして、その隙をついて人を幻想の世界へと引きずり込もうとする妖しい者たち。賑やかで目まぐるしい、そしてどこか心許なくなるような、そんな不思議な世界観を、じっくり味わってください

孤島パズル:有栖川有栖

 次に紹介するのは、有栖川有栖さんの「孤島パズル」です。

 英都大学推理小説研究会の紅一点会員・マリアが「伯父の別荘へ行かない?」と誘った孤島の夏。メインテーマは宝探し。バカンスに集う男女、わけありの三年前、次に船が来るのは五日後・・・。江神部長以下三名の会員たちはパズルにとりかかるが、楽しむ暇もなく、起こった事件に巻き込まれてしまう・・・。学生アリスシリーズ第2弾!
 私の大好きなシリーズのうちの一つです。夏休み、絶海の孤島、宝探し・・・という、いかにも夏に読みたい要素の詰まった本格ミステリーです。着目すべきはその文章表現力。夏の島の情景描写も、そこに集う人々の心理描写も、詩的でロマンティックです。そしてもちろん有栖川有栖さんらしい、論理を追究した質の高い本格ミステリーも楽しめます。ぜひぜひ読んでみてください。

カクレカラクリ:森博嗣

 次に紹介するのは、森博嗣さんの「カクレカラクリ」です。

 廃墟マニアの郡司と栗城は、同じ大学に通う真知花梨に招かれて、彼女の故郷である鈴鳴村を訪れた。その村には奇妙な伝説があった・・・明治時代に作られた絡繰りが村のどこかに隠されており、120年後の今年、動き出すというのだ!興味を持った郡司たちは村を探索し始めるが・・・。
 爽やかな村もののミステリーです。夏休み、田舎の村、奇妙な伝説・・・夏らしさがぎゅっと詰まった1冊です。120年間ずっと誰にも知られずに村に眠っていた絡繰りが、今年動き出す・・・このあらすじだけで、ロマンを感じて何だかわくわくしませんか?山奥の村での青年たちのひと夏の謎解きと冒険をぜひ楽しんでみてください。

TUGUMI:吉本ばなな

 次に紹介するのは吉本ばななさんの「TUGUMI」です。

 病弱で生意気な美少女・つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った・・・。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。
 世界的な作家・吉本ばななさんの代表作の一つともいえる作品です。吉本ばななさん特有の、洗練された繊細な文章表現で紡がれる夏の日々は、私たちの心を澄み渡らせて、綺麗にしてくれます。どんな時間も決して通り過ぎていくだけで絶対に戻らないのだということ、だからこそ美しいのだということを静かに実感させてくれる極上の文学です。

八月の青い蝶:周防柳

 次に紹介するのは、周防柳さんの「八月の青い蝶」です。

 急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学のときに広島で被爆していた。ある日、妻と娘は亮輔が大事にしている仏壇で古びた標本箱を見つける。そこには前翅の一部が欠けた小さな蝶がピンで留められていた。それは昭和二十年八月に突然断ち切られた、彼の切なくも美しい恋を記憶する品だった・・・
 八月といえば日本にとっては終戦の月でもあります。広島と長崎に落とされた原子爆弾。それによって多くの命が失われ、そしてその後も多くの人が苦しんでいます。この小説の亮輔は被爆者であり、つまりは当事者です。当事者である亮輔の戦争と原爆への訴えは、資料でしか戦争を知らない私の心に衝撃を与えました。原爆が落ちたあの瞬間まで、確かにそこには生きていた普通の人々がいたのだということを感じさせてくれる作品です。戦争を知りたい人にぜひ読んでほしい一冊です。

屍人荘の殺人:今村昌弘

 次に紹介するのは、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」です。

 神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰く付きの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪れた。合宿一日目の夜、映研の部員たちは肝試しに出かけるが、そこで想像もしていなかった事態に遭遇。ペンションに立て籠もることを余儀なくされる。一夜が明けると、部員の一人が密室で殺されていた・・・。
 2018年にすごく話題になり、映画化までされた本格ミステリーです。クローズド・サークルものですが、その状況の作り方がかなり特殊。これまでに見たことのない斬新なクローズド・サークルに、本格ミステリーファンでも度肝を抜かれるはずです。そんなとんでもない状況の中で起こる殺人と、探偵によって展開される正統派な推理。最後まで一気に読める面白さです。暑い夏にぜひどうぞ。

夏の騎士:百田尚樹

 次に紹介するのは百田尚樹さんの「夏の騎士」です。

 小学六年生の夏。ぼくと健太、陽介は勉強もできない落ちこぼれ。だが、『アーサー王の物語』に感動したぼくの発案で、三人で「騎士団」を結成。憧れの美少女・由布子をレディとして忠誠を誓う。彼女を守るため、隣町で起きた女子小学生殺害事件の犯人を探し始めるが・・・。
 上で紹介した、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」を意識して描かれた、日本版の「スタンド・バイ・ミー」です。落ちこぼれ三人で「騎士団」を結成して憧れの女の子を守るという行動には少し青臭さも感じますが、それに一生懸命な少年たちが微笑ましく、自分にもこんな時期があったなあ、と懐かしい気持ちにもなります。爽やかで清々しい少年たちの物語を、ぜひ。

きことわ:朝吹真理子

 次に紹介するのは、朝吹真理子さんの「きことわ」です。

 貴子と永遠子。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった・・・25年後、別荘の解体をきっかけに、二人は再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う思い出。やわらかな文章で紡がれる、曖昧でしたたかな世界の形。芥川賞受賞作。
 芥川賞なだけあって、かなり文学みが強いというか、純文学に慣れていない人には読みにくい文章かもしれません。しかし文章表現や言葉に何とも形容しがたい美しさがあり、それが私の心に染み渡りました。夢なのか現実なのか、過去なのか現在なのか、境目のはっきりしない曖昧でふわふわとした思考の中をのんびりと揺蕩うような心地よさを、読んでいて感じました。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?
 この記事では夏に読むべき小説を17冊、紹介しました。どれも夏を感じられる小説ばかりで、夏の景色の中で読むのにぴったりです。
 夏の暑さに辟易している方もいるかと思いますが、夏は暑いだけでなく、美しい季節。ここに紹介した本を読んで、夏を楽しみましょう!
 では、ここらで。
 よい読書ライフを!

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