※この記事には広告が含まれています
みなさんこんにちは、らくとです。
みなさん、忙しくて十分な時間が取れなくて、合間時間にちょこっと読書をするときってありますよね。作業の合間とか、通勤時間とか、そういうちょっとした空き時間に読むとなったとき、それが長編小説だと、せっかく世界観に入り込みかけていたのに、すぐに本を置かないといけなくって、もどかしくなったりしたことがあると思います。
また、ちょっと読書を始めてみたい、でも、活字を読むことにあまり慣れていないので、いきなり長時間読むのはしんどい・・・そんな人もいるかもしれません。
そんな人たちにおすすめするのが、「短編集」です。短編集とはその名の通り、短い物語がいくつか収録され、一冊の本になった小説のことです。それぞれの話が終わったところで一旦区切りになるので、そこが本を置くタイミングになりますし、「この時間はこの一編だけ読もう」と決めて読んだりすることもでき、そうなると、中途半端なところで本を置くということはなくなります。短編集というのは、とても読みやすい形態なのです。
この記事では、優れた短編ばかり入った私おすすめのミステリー短編集を17冊、紹介したいと思います。(ミステリー以外の短編集については、また別の記事を出したいと思います!)
おすすめのミステリー短編集17選!
では、早速紹介していきます!
満願:米澤穂信
まず紹介するのは、米澤穂信さんの「満願」です。
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが・・・鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作を始め、全六話を収録し、三冠を達成したミステリー短編の金字塔。
正直、ここまで完成度が高い短編集というのは、なかなかお目にかかれないと思います。どれもミステリーとしてよく出来ているのはもちろんですが、その事件の背景や、そこに至るまでの登場人物たちの心理なども謎の一部としてしっかり作り込まれているので、物語自体にすごく引き込まれます。短編なのに、一つの長編を読んだようなしっかりとした読み応えが、六話全部にありました。米澤穂信さんの作家としての才能のすごさを改めて実感した一冊です。どれも素晴らしいのですが、個人的には、ベテラン警察官が、殉職した部下の死について考える「夜警」と、海外で働くビジネスマンが最悪の状況に直面する「万灯」が好みでした。
夜の床屋:沢村浩輔
次に紹介するのは、沢村浩輔さんの「夜の床屋」です。
慣れない山道に迷い、無人駅での一泊を余儀なくされた大学生の佐倉と高瀬。だが彼らは深夜、駅前の理髪店に明かりがともっていることに気付く。好奇心に駆られた高瀬が、佐倉の制止も聞かずに扉を開けると・・・。表題作を始め、奇妙な事件に予想外の結末が待つ全7編。
そこまで有名ではないのですが、個人的にすごく好きな短編集です。全体的に話の雰囲気が独特で、ちょっぴり不思議なような怖いような、そんなファンタジーっぽい魅力もありつつ、最後にはしっかりとミステリーとしてのオチをつけてくるのが好きでした。また、雰囲気は似つつも、短編の内容はバラエティに富んでいて、次はどんな話が読めるんだろう、とわくわくさせてくれました。お気に入りは、絨毯だけ盗んだ泥棒の話から意外な結末へ着地する「空飛ぶ絨毯」と、異国の深い森の中の監獄で起きた奇妙な殺人事件を描く「『眠り姫』を売る男」です。
私たちが星座を盗んだ理由:北山猛邦
次に紹介するのは、北山猛邦さんの「私たちが星座を盗んだ理由」です。
難病の女の子を喜ばせるため、星座を一つ消してみせる男の子を描く表題作ほか、5つの物語の全てに驚愕のどんでん返しが待つ短編集。
本格ミステリーの名手として有名な北山さんの魅力が遺憾なく発揮されたミステリー短編集です。どの話も面白いのですが、その中でも2つの短編が特に私の印象に残っています。数多くの短編ミステリーを読んできましたが、この2つは私の中で特別です。
まず一つ目が「恋煩い」。恋のおまじないを信じる可愛らしい女子高生の話かと油断していれば、必ず最後にやられます。二つ目が「妖精の学校」。これは本当に衝撃の短編ランキングがあれば1位につけたいくらいの衝撃でした。よく分からない世界観で話が進んでいくのですが、最後の一行でがらりと雰囲気が変わります。この2つの短編は、ぜひみなさんに読んでいただきたいです。
あと十五秒で死ぬ:榊林銘
次に紹介するのは、榊林銘さんの「あと十五秒で死ぬ」です。
死神から与えられた余命15秒をどう使えば、「私」は自分を撃った犯人を告発し、そして反撃することができるのか?被害者と犯人の奇妙な攻防を描く「十五秒」を始めとして、「十五秒」という限られた時間の中で形勢を逆転させるトリッキーな短編集。
みなさん、「15秒」という時間は、長いと思いますか、短いと思いますか?きっと多くの人は「短い」と答えると思いますが、一刻一秒を争うような状況だと、意外と15秒というのは長いかもしれません。この短編集の目玉であり、作者のデビュー作でもある短編「十五秒」は、主人公が、死ぬまでに死神から与えられた15秒間を使って、自分を殺した犯人を陥れようとする話。限られた時間の中で、利用できるものは全て利用して繰り広げられる特殊な頭脳戦は、最後まで目が離せません。15秒もあれば形勢はひっくり返る・・・そんなミステリーの面白さを感じられた短編集でした。
「十五秒」はもちろん傑作ですが、それ以外では、首が取れても15秒間だけは死なない特殊体質を持つ住民たちが暮らす島で起こった殺人事件を描いた「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」が好みでした。
隣人:永井するみ
次に紹介するのは、永井するみさんの「隣人」です。
優しい夫に真っ白でふわふわな猫・・・美由紀の満ち足りた生活は、夫の溺死によりピリオドが打たれる。しかし、それはさらなる絶望への幕開けだった―表題作を始めとした、戦慄のサスペンス集。
本格ミステリーというよりは、2時間ドラマにしたら面白そうな、心理サスペンス短編集でした。どの話も、じわじわと首を絞められていくように嫌な雰囲気が漂っており、最後には予想外で、そしてぞぞっとするような結末が用意されています。人間って怖いな、というよりは、「女って怖いな」と思わされるような短編集で、でも同時に表現に女性的な美しさも感じました。個人的に好きだったのは、表題作「隣人」と、老夫婦の家で起こった火事の恐るべき真相を描く「洗足の家」です。イヤミスが好きな人におすすめです。
Dの殺人事件、まことに恐ろしきは:歌野晶午
次に紹介するのは、歌野晶午さんの「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」です。
カメラマンの「私」は、渋谷の道玄坂で、賢いが生意気な少年・聖也に出会い、交流するようになる。しかしある日、道玄坂のある薬局で起こった殺人事件の第一発見者になった私と聖也は事件の真相を探り始めるが――表題作を始めとして、本格ミステリー界随一の騙しの達人が、江戸川乱歩の名作群をアップデートして蘇らせた、超ミステリ短編集。
独特な世界観のミステリーに定評がある大御所・歌野晶午さん×日本の本格推理界の草分けであり、短編の名手でもあった大レジェンド・江戸川乱歩なんて、それだけで手に取る価値はあるというものです。江戸川乱歩の有名短編をリメイクした短編が8つ収められている今作は、江戸川乱歩のおどろおどろしく、ぞっとするようなストーリーや世界観をしっかりと土台に置きながら、歌野晶午さんらしい癖の強さやブラックなユーモアも織り込んで別の物語に仕上げている、とても贅沢な短編集です。本格ミステリー好き・江戸川乱歩好きなら必見です。個人的に好きだったのは、「椅子?人間!」(元:「人間椅子」)、「『お勢登場』を読んだ男」(元:「お勢登場」)でした。
オーブランの少女:深緑野分
次に紹介するのは、深緑野分さんの「オーブランの少女」です。
美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった―表題作を始めとする、異なる時代、異なる場所を舞台に生きる美しい少女たちを巡る五つの短編集。
深緑野分さんは私のお気に入りの作家さんの一人なのですが、これは、彼女のデビュー短編「オーブランの少女」を含んだ、ミステリー短編集です。世界観の完成度といい、ミステリーとしての出来映えといい、これがデビュー作だというのに驚きました。5つ短編が入っているのですが、どれも「少女」を巡る謎であることが共通しています。「少女」というのは、脆くて繊細で、ときにぞっとするほど残酷で、でもやっぱり美しいものだと思わされました。読んだ後に思わず感嘆のため息をつきたくなるような、そんな短編集でした。
お気に入りは、表題作「オーブランの少女」と、昭和初期の東京の女学生の淡い憧れを描く「片想い」、北の大陸の漁村に流れ着いた首のない死体の過去を巡る物語「氷の皇国」です。
夜よ鼠たちのために:連城三紀彦
次に紹介するのは、連城三紀彦さんの「夜よ鼠たちのために」です。
脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻き付けられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は何か・・・意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。
これは、最初に世に出たのは1980年代なので、かなり前の作品なのですが、「幻の名作」と言われるほどにミステリー好きたちからの評価が高く、復刊を希望する声が多かったので、2014年に再編集して、新装版が発売されました。つまりは、昔からのミステリー好きの間では有名な作品です。
連城三紀彦さんというと、推理小説としての巧みさと、人間の心や人生の機微を叙情的に描く表現力の美しさ、その両方を兼ね備えた作家さんとして有名ですが、この短編集は、まさにそんな連城三紀彦さんの真骨頂というべき作品だと思います。
この短編集を一言で表すならば、「情念」だと思います。ただの「想い」ではなく、もっと深くて重く、ときには誰かの人生を滅ぼしてしまいさえするような、そんな人々の「情念」が立ち上ってきているような、そんな静かな迫力を、この短編集からは感じます。そして、そんな「情念」に惑わされて油断していたら、思わぬところにトリックが仕掛けられていて、ミステリーとしての上手さにも舌を巻くことになります。全てにおいてレベルが高い作品です。
私が特におすすめするのは、表題作「夜よ鼠たちのために」と、夫が探偵の元に持ち込んだ、妻の尾行依頼が思わぬ結末に繋がる「奇妙な依頼」、自分とそっくりな男との出会いで人生の歯車が狂い出すスターを描いた「代役」です。
許されようとは思いません:芦沢央
次に紹介するのは、芦沢央さんの「許されようとは思いません」です。
かつて祖母が暮らしていた村を訪れた「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。祖母はなぜ、余命僅かだった曾祖父をあえて殺したのか・・・表題作を含む、人間の心の闇をのぞき見る、傑作ミステリ短編集。
芦沢央さんといえばイヤミスで有名な方ですが、これは、そんな芦沢さんの魅力を存分に味わえるミステリー短編集です。どれも、誰の中にもあり得る心の闇、普段は息を潜めていてもふとした瞬間に出てくる黒い部分をじわじわと露にするような話ばかりで、読んだ後は、ずんと気分が重くなってしまいます。けれども、人というのはこういうものを無性に見たくなる生き物であることは、イヤミスというのが人気ジャンルの一つであることから見ても分かりますよね。ときにぎくっとし、ときにぞくりとし、ときに驚きながら読んでみてください。
ちなみにおすすめは、自身の犯したとんでもないミスに気付き、保身に走る若手営業マンの末路を描いた「目撃者はいなかった」です。これは、読んでいてこちらまで冷や汗をかきそうになりまいした。また、芸能界で躍進する子役を孫に持つ老女が真冬のバルコニーに閉じ込められる「ありがとう、ばあば」も、ぞっとする話でした。
沙羅は和子の名を呼ぶ:加納朋子
次に紹介するのは、加納朋子さんの「沙羅は和子の名を呼ぶ」です。
平凡な会社員・元城一樹の一人娘・和子の前に姿を現した不思議な少女・沙羅。その名前は、消し去ったはずの過去を甦らせた。もし別の選択をしていればどうなっていただろうか・・・そんな夢想を始まりに、今の世界とあり得たはずの世界が交錯しはじめて・・・表題作を含む珠玉のミステリ短編集。
私の大好きな作家・加納朋子さんは短編小説の名手なのですが、こちらはその中でも特に私のお気に入りの短編集です。加納朋子さんにしては、少し重くてシリアスな雰囲気なのですが、それでもやはりふとしたところに温かみと、そしてどことなく懐かしさも感じる、そんな作品ばかりです。ただのミステリーではなく、少しファンタジー要素のある話もいくつかあり、そのちょっぴり不思議だけど美しい世界観が好きでした。全体的に静かで、上品な短編集です。
個人的には表題作と、大学生が廃墟となった病院で少女と交流する「黒いベールの貴婦人」と、双子の姉を持つ主人公がデートの待ち合わせで奇妙な食い違いに遭遇する「オレンジの半分」が好きでした。
ちなみに、加納朋子さんの魅力とおすすめ作品について語った記事がありますので、こちらもぜひ読んでいただけたら嬉しいです。↓
【おすすめ作家】加納朋子の魅力とおすすめ作品を紹介します! | らくとの本棚
むかしむかしあるところに、死体がありました:青柳碧人
次に紹介するのは、青柳碧人さんの「むかしむかしあるところに、死体がありました」です。
昔ばなし・・・なのに新しい!?「浦島太郎」や「鶴の恩返し」など、誰もが知っている日本昔ばなしのはずが、どこかがおかしい。殺人に密室、アリバイトリックにクローズド・サークル・・・あの話の裏ではこんな怖ーいことが起きていたかも・・・。昔ばなし×本格ミステリーという異色の組み合わせで、読者の想像の遙か上を行く、面白すぎる短編集。
私がここ最近で読んで衝撃を受けた本格ミステリーの内の一つです。日本昔ばなしと本格ミステリーを掛け合わせようという、そんなことをどうやったら思いつくのだろうと思います。誰もが知っている昔ばなしを、そのストーリーの大事な部分は変えずに、その昔ばなしならではの登場人物や特殊設定を上手く利用して、本格ミステリーに仕立て上げる・・・かなり強引な力技に見えますが、細部がきちんと考えられているので、ミステリーとしてちっとも雑ではなく、むしろとても秀逸です。そして、全体を通してしっかりとふざけているところも面白い。その遊び心とミステリーとしての上手さのバランスが素晴らしいのです。
全て面白いですが、個人的には花咲かじいさんが殺されてダイイングメッセージを遺す「花咲か死者伝言」と、龍宮城で密室殺人が起きる「密室龍宮城」が好きでした。
また、赤ずきんを主人公とした西洋童話版も出ておりますので、そちらもぜひ読んでみてください。日本昔ばなし版に負けず劣らず面白いです。↓
アリバイ崩し承ります:大山誠一郎
次に紹介するのは、大山誠一郎さんの「アリバイ崩し承ります」です。
商店街の中にある美谷時計店には、「アリバイ崩し承ります」という奇妙な貼り紙がある。店主の美谷時乃は、時計屋であると同時に、アリバイ崩しの達人でもあるのだ。新米刑事が持ち込んだ、アリバイが絡む難事件を、彼女は解決できるのか?アリバイ崩しをテーマにした短編集。
「アリバイ」というのは、「現場不在証明」と言い換えることもでき、ミステリーではよく出てくる用語です。昔からあらゆるミステリーで使い古されている手なので、そのトリックもある程度パターン化されてしまって真新しいものは作れないのでは・・・そう思っていたのですが、この短編集を読んで、あながちそんなこともないな、と考えを改めました。あらすじ通り、全話アリバイをテーマにした事件や謎になっているのですが、どの話もミステリーとしてとても楽しみながら読めました。度肝を抜かれるようなトリックもあり、思わず「なるほど」とうなってしまうようなロジックもあり、こんな「アリバイ」というあまりにも定番のものをテーマにしてもこれだけ面白いものが書けるのだな、と思いました。
個人的に面白かったのは、犯人と思われている女性のアリバイを探す「時計屋探偵と失われたアリバイ」と、時乃が幼い頃、祖父が彼女を試すために考えたアリバイトリックの真相を考える「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」です。
午後のチャイムが鳴るまでは:阿津川辰海
次に紹介するのは、阿津川辰海さんの「午後のチャイムが鳴るまでは」です。
九十九ヶ丘高校のある日の昼休み。2人の男子高校生は、あるミッションを成功させるため、こっそり学校を抜け出し、文芸部員たちは部誌を締め切りに間に合わせるため、行方不明のイラストレーターを探す。かたやある教室では、マドンナへの告白権をかけた「消しゴムポーカー」が始まろうとしていた・・・。学校の「昼休み」には、青春と謎が詰まっている?傑作青春ミステリー。
2017年にミステリー界に登場し、まさに「新進気鋭」という言葉がぴったりな阿津川辰海さんの、青春ミステリー連作短編集です。青春小説・ミステリー小説、どちらとして読んでもかなりレベルが高く、楽しめる作品です。面白いのが、全ての話が「同じ高校の、同じ日の昼休み」という限られた舞台内の出来事だということ。登場人物はそれぞれ違いますが、全ての出来事は同じ場所で同時並行で起こっており、同じ高校内にいるのに、それぞれがそれぞれに好きな仲間たちと好き勝手なことをしている、そのごちゃごちゃ感、ドタバタ感が、まさに学生だった頃の昼休みの空気感を私に懐かしく思い出させました。とにかく明るくて、ときに馬鹿馬鹿しくて、でもみんなそれぞれそれなりに真剣で、ああ、青春ってこういうときのことをいうんだな、と眩しく感じました。もちろん、ミステリーとしても申し分なく面白かったです。
私のお気に入りは、男子高校生が2人で学校を抜け出す「RUN!ラーメン RUN!」と、クラスのマドンナへの告白権をかけた男子たちの熱き消しゴムポーカーの様子を描く「賭博師は恋に舞う」です。
叫びと祈り:梓崎優
次に紹介するのは、梓崎優さんの「叫びと祈り」です。
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇・・・ひとりの青年が世界各国で遭遇する数々の異様な謎。各種年末ミステリ・ランキングの上位を席巻し、破格の評価を受けたデビュー作。
ある一人の日本人青年・斉木が世界の国々を旅する道中で出会った謎を解き明かしていく、異国情緒感じる連作短編小説です。舞台の国が変わるたびに、その背景に広がる景色や、そこで出会う人々の姿格好などががらりと変わって、まるで異世界に来たような、そんな不思議な感じがしました。それぞれの国の文化的・歴史的・地理的背景によって作られた独自の慣習や思想などが事件に関わっていたり、事件を解く鍵になったりするのがとても興味深かったです。日本からほとんど出たことのない私に、新しい世界をちらりとのぞかせてくれた短編集です。
個人的お気に入りは、ロシアの修道院を舞台にした「凍れるルーシー」と、南米のアマゾン雨林を舞台にした「叫び」です。
謎解きはディナーのあとで:東川篤哉
次に紹介するのは、東川篤哉さんの「謎解きはディナーのあとで」です。
国立署に勤務する刑事・宝生麗子は、実は世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様。彼女が難事件に遭遇するたびに相談するのは、執事兼運転手の影山。ときに執事らしかぬ暴言を吐きながらも、影山は麗子の話を聞いて、鮮やかに事件の真相を解き明かしていく。
こちら、100万部を軽く売上げ、本屋大賞も受賞したベストセラーです。ドラマ化されたこともあり、普段本を読まない方でも知っているのではないでしょうか。作者はユーモアミステリーというジャンルにおいて圧倒的な存在感を放つ東川篤哉さんです。
刑事のお嬢様の話を聞いただけで執事が真相を言い当てるといういわば安楽椅子探偵ものですが、これがとにかく面白い。面白いというのは、ミステリーとして面白いという意味でもあるし、笑えるという意味の面白い、両方です。執事がお嬢様に暴言を吐いたり、お嬢様がおバカな上司に全力でツッコミを入れたりと、登場人物の掛け合いが面白く、爆笑しながら読みました。このユーモアのおかげで、すごくライトにさくさくと読めるので、あまり普段本を読まない方にもおすすめです。また、ふざけながらも推理はしっかりとしたロジックに基づいており、ミステリーとしてもとてもよくできています。ふざけるところは全力でふざけ、決めるところは決める、そのユーモアとミステリーのバランスが絶妙なのです。
ちなみに、東川篤哉さんの笑えるミステリー短編シリーズとして、他にも「魔法使いシリーズ」や「鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ」などがありますので、こちらも紹介しておきます。↓
『魔法使いシリーズ』↓
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ↓
ひぐらしふる:彩坂美月
次に紹介するのは、彩坂美月さんの「ひぐらしふる」です。
公衆の面前で突如として姿を消した親子連れ。山のてっぺんでUFOに連れ去られた幼なじみ。実家に帰省した有馬千夏の身辺で起こった不思議な事件の真相は?そして、彼女の前にたびたび現れる“自分そっくりの幻”の正体とは。ひと夏の青春ミステリー。
彩坂美月さんは、すごく有名というわけではありませんが、個人的にとても好きな作家さんで、女の子が主人公の青春ミステリーを書かせたら外れがないと思っています。この方の書く青春ミステリーには、どこかぼんやりとした危うさがあって、それがノスタルジックな雰囲気と合わさって、登場人物たちにとって、儚くも忘れがたいひとときを生み出します。そこがとても好きです。この作品もそんな彩坂さんの魅力が遺憾なくはっきされており、しかも夏色が強いため、ノスタルジーがより感じられます。一つ一つの謎もささいなようでありながら、どこか悪夢の中にいるような奇妙さ、不可思議さも感じて、その世界観に引き込まれます。
個人的に好きだったのは、夏祭りの夜、親友同士で行われたある賭けと指輪消失の謎を解く「素敵な休日」です。
鬼の跫音:道尾秀介
次に紹介するのは、道尾秀介さんの「鬼の跫音」です。
同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取ってほしいと頼むが・・・「悪意の顔」など、心の鬼に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。
道尾秀介さんの作品って鬱々したものが多いのですが、これはその中でもレジェンド級の鬱作品です。暗いし、狂ってるし、救いがないし・・・結末を見るとしっかりミステリーなのですが、これはもはやホラーに分類されてもいいのではないか、と思うほどどの作品も恐ろしいものばかりでした。誰しもが心の中に鬼を飼っていて、何かをきっかけにそれが目覚め、制御できなくなって次第に自分自身が鬼に乗っ取られてしまう・・・そしてはっと気が付いたときに自分がいるのは、どんな取り返しのつかない現実か。自分を乗っ取ろうとする鬼の重々しい足音が徐々に近づいてくるような、そんな絶望感を覚えるこのタイトルは、この作品にぴったりです。読むとその重さにメンタルがやられますが、人の心の怖さを描いたミステリー短編としてとても秀作だと思います。
個人的には、刑務所で作られた椅子に彫られた奇妙な文章から過去の猟奇殺人の真相に辿り着く「犭(ケモノ)」と、秋祭りの夜、久しぶりに帰った故郷の街で、二十年前に犯した罪がよみがえる「よいぎつね」がおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、合間時間に読みたいミステリー短編集を17冊、紹介しました。気になった作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。
ではここらで。
良い読書ライフを!

コメント