みなさんこんにちは、らくとです。
世の中にはいろんな小説がありますよね。
誰が読んでも面白い、いわゆる「万人受け」の小説もあれば、はまる人にははまるけれど、はまらない人にははまらない、いわゆる「読む人を選ぶ」小説もあります。
もちろん、万人受けする小説も安定感があっていいのですが、そういう好き嫌いの分かれる小説というのは、読書に刺激を与えてくれます。もちろん読んでみて、結局「これは自分には合わないな・・・」「これ、無理かも・・・」と思うこともあるとは思いますが、それもまた一つの経験であり、ある意味では読書の楽しさとも言えます。
また、好き嫌いが分かれるというのは、言い換えると、それだけ個性的で、他の作品にはない独特な世界観やセンスを持っているということ。その世界観やセンスが自分に合いさえすれば、その人にとっては「最高に面白い」小説になります。つまり、そういう作品は、はまる人は、とことんまでどっぷりとはまることが多いのです。
この記事では、そんなはまる人にははまる癖の強い小説を12冊、紹介していきたいと思います。
はまる人にははまる癖の強い小説12選!
早速紹介していきます。
緋色の囁き:綾辻行人
まず紹介するのは、綾辻行人さんの「緋色の囁き」です。
「私は魔女なのよ」――名門聖真女子学園の寮で、高取恵が謎の言葉を残して焼死し、続いて堀江千秋が刺殺された。転校してきたばかりの和泉冴子は、相次ぐ級友の死に、「もしかして私が」という不安におののいていた。彼女には夢遊病の癖があったからだ。さらに連続殺人は進行し・・・。
綾辻行人さん自体がわりと癖の強い作風の作家さんなのですが、こちらはその中でも異彩を放っている作品です。舞台は全寮制の名門女子校。そこで起こるのは血塗られた殺人劇。殺されていく美しい少女たちと、自分自身の過去の影に怯える主人公・・・何か海外のホラー映画にありそうなストーリーですが、その中でもしっかりと綾辻さんの世界観が表現されています。全寮制という閉鎖的な空間や、自分自身すらも信じられない主人公の状況もあってか、そこはかとない不気味さ、心許なさ、どこにも逃げ場のない不安感が終始漂っていて、それでもその薄気味悪さが癖になり、物語の中にぐいぐい引き込まれていきます。
綾辻さん自身が「個人的にとても気に入っている作品」と評しているこちら、興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
ちなみにこちら、3部作のシリーズものになっており、「緋色の囁き」に続いて「暗闇の囁き」と「黄昏の囁き」が出ています。ストーリーや登場人物が繋がっているわけではないのですが、3つの作品全てによく似通った薄気味悪さが漂っています。何だかずっと悪い夢の中にいるような、そんな曖昧で幻想的なホラーテイストで描かれる本格ミステリーとなっており、綾辻さんファンの中でも隠れた名シリーズとして知られています。世界観が独特なので万人におすすめは出来ませんが、好きな人は好きだと思うので、ぜひ読んでみてください。
向日葵の咲かない夏:道尾秀介
次に紹介するのは、道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」です。
明日から夏休みという終業式の日。学校を休んだ同級生・S君の家を訪れた僕は、彼が首を吊って死んでいるのを発見する。しかし、その後、死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて僕の前に現れた――「僕は殺されたんだ」と訴えながら。
癖強ミステリーといえば、これを真っ先に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。それくらい有名な作品ですね。
同級生の死の謎を追う小学生のひと夏を描いた話ですが、夏と小学生という一見爽やかな組み合わせからは想像できない、陰鬱な話となっています。万人におすすめできないと思う理由は、その気持ち悪さ。何かが狂っているような、歪んでいるような、読んでいて何となく嫌悪感を覚えるような気持ち悪さが、物語全体に漂っています。正直、この雰囲気が苦手だと思う人も一定数いるのではないでしょうか。
けれど、それでも読んでみてほしいと思うのは、やはり話自体が抜群に面白いから。これを初めて読んだときの衝撃は、言葉では上手く表せません。「なんなんだ、この小説は」・・・そんな風に思ってめまいがしました。記憶を消してもう一度この衝撃を味わいたい、そんな風に強く思う作品の一つです。
好き嫌いは一旦横に置いておいて、刺激的で、忘れられない読書経験をしたい人には、ぜひおすすめしたい一冊です。
夏と花火と私の死体:乙一
次に紹介するのは、「夏と花火と私の死体」です。
9歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、呆気なく・・・。こうして、一つの死体の隠蔽をめぐる幼い兄妹の悪夢の四日間が始まった。ホラー界を驚愕させた奇才・乙一のデビュー作。
こちらは、ホラー小説です。ひょんなことで殺してしまった少女の死体をなんとか処理しようと、幼い兄妹が奮闘する話ですが、本来無邪気で可愛らしいはずの小学生と、死体というなんとも恐るべき組み合わせ、しかもその背景には爽やかな夏の風景が広がっている・・・そのアンバランスさに言い様のない薄ら寒さを覚えました。小学生って無邪気で可愛らしいもの・・・なはずなのに、この小説に出てくる子どもたちは全然違っていて、無邪気といえば無邪気なんですが、何か大事なものがが欠けている、どこかが狂っている・・・そんなおかしな子どもたちに、ぞわっとします。
また、この物語が誰視点で描かれているのかも、この小説が評価されている大きなポイントであり、それによって薄ら寒さがより増しています。そこも気にして読んでみてください。
玩具修理者:小林泰三
次に紹介するのは、小林泰三さんの「玩具修理者」です。
何でも直せるという「玩具修理者」。ある日、弟を過って死なせてしまった私は、親に知られる前に弟を玩具修理者の元へ持って行く・・・。第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
この作品に限らず、小林泰三さんは全体的に癖の強い作品が多い印象の作家さんですが、これはそんな小林泰三さんのデビュー短編。デビュー時からすでに世界観がとち狂っています。
話が二作入っていて、一作目は表題作「玩具修理者」。こちらは本当にとんでもない衝撃作です。とても短いのですが、とにかく狂っている。生き物でさえもまるで物のように「修理」してしまう謎の存在「玩具修理者」。生と死、生物と無生物の境目を曖昧にしてしまうこの存在の奇妙さ、不条理さは、私には到底受け入れがたいもので、でもこの独特の世界観は個人的には好きでした。でも少し辟易したのは、その描写のグロさ。読んでいて気分が悪くなるくらいなので、グロいの苦手な人はやめた方がいいかも。
そして、個人的に表題作に負けず劣らず好きだったのは、二作目の「酔歩する男」。ちょっとあらすじが説明しづらい、つまりはそれほどに難解で意味のよく分からない話なのですが、読んでいて不安になるような、自分の信じていた常識が足元から崩れて行くような、そんな不思議で恐ろしい話でした。
もう一度読みたい、とは思わないですが、一度は読んでみるべき作品だと思います。グロに耐性のある人で、独特の世界観に挑戦してみたい人はぜひ。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:桜庭一樹
次に紹介するのは、桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」です。
中学生の山田なぎさは、子どもという境遇に絶望し、一刻も早くお金という“実弾”を手にするべく、進路として自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生・海野藻屑は何かと絡んでくる。そして、なぎさは、藻屑が日々父からの暴力に曝されていることを知ってしまい・・・。
こちらは元々ライトノベルとして出版され、そのジャンルの垣根を越えて高く評価された作品です。青春文学と銘打たれていますが、青春というにはあまりにも暗くて残酷で、でも少女時代ならではの儚くて爽やかな、もう二度と戻らない一瞬のきらめき、そういうものも感じられて、その点ではやはり青春小説なのかな、とも思いました。誰かが「爽やかな鬱」と形容しているのを見かけたのですが、それが一番しっくりきました。
ただ与えられるだけの子どもという境遇の不自由さ、逃げ場のなさを残酷なまでに描いていて、幸せな未来なんて到底想像できない、そんな暗さの中話が進んでいきます。読んでいてやりきれないというか、今まで自分が生きてきた世界の裏に広がっていた暗闇を見たような、そしてそこが世界の全てだと思って生きている子がいるのだということを実感して、心が痛くなりました。登場人物たちの思いがとても切実で、胸がぎゅっと苦しくなり、読み終えるときにはかなりのメンタルを消耗していました。
話自体は重いのですが、個人的に比喩表現、文章表現がとても好きな小説でもありました。おしゃれでかつ的確で、でもありふれていなくて独特のセンスが光っていました。タイトルも、読む前は「どういう意味なんだろう」と謎でしたが、読み終えたら、哀しい気持ちとともに、この物語にこれ以上のタイトルはないと思えます。
とにかく、個人的にあまり他に類を見ないタイプの不思議な小説だと思いました。鬱々とした話しなので、メンタルが安定しているときにぜひ、挑戦してみてください。
神様ゲーム:麻耶雄嵩
次に紹介するのは、麻耶雄嵩さんの「神様ゲーム」です。
神降市に勃発した連続猫殺し事件。町が騒然とするなか、芳雄の小学校にやってきた謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。そして、鈴木の予言通りに殺人事件が起きて・・・。
こちら、元々子ども向けのレーベルで出版されたらしいのですが、それが信じられないほど恐ろしい作品です。これはあんまり子どもは読まない方がいいのでは・・・と個人的には思いました。
「神様だ」と自称する転校生・鈴木。普通なら子どもの妄想か虚言で片付けられるはずですが、彼は、犯人を言い当てたり事件を予言したりと、それを信じるに足るような言動をするのです。そして、この「神様」の存在が、この物語の一番のキーポイントであり、そして同時にかなりの曲者。彼が神様だということを私たちが信じるか信じないかで、話が全然違ってくるのが、面白いところ。
小学生が主人公なのですが、そうとは思えないくらい、ぞっとするような悪意に満ちた物語です。グロいシーンや目も当てられないようなシーンもあり、人間不信になってしまいそうなくらい、後味も悪い。けれども、おすすめするのは、やはりミステリーとして面白いから。
癖の強い作品が多い麻耶雄嵩さんですが、その中でもなかなかのレベルの問題作。ちょっと変わった邪悪なミステリーを読みたい方はぜひ。
殺戮にいたる病:我孫子武丸
次に紹介するのは、我孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」です。
東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔。繰り返される陵辱の果ての惨殺。この恐るべき事件の行く末とは・・・衝撃のホラー小説。
こちらもミステリー好きの間ではレジェンド的な存在となっている有名作品ですね。ミステリー好きとして読むべきおすすめミステリーとして挙げる人も多いのではないでしょうか。
猟奇的殺人を繰り返すサイコ・キラーとその犯行の様子を描いた話なのですが、とにかくグロい。しかも描写がけっこう細かいので、苦手な人にはキツいのでは、と思います。しかもただグロいだけではなく、女性の尊厳を踏みにじるような胸くそ悪い性的描写も多く、特に女性だと生理的に受け付けない、気持ち悪い、と思う人も多いと思います。いわゆる「エログロ」という部類に入るのでしょうか・・・その究極形という感じ。
けれど、耐えられるならぜひそこで耐えて、最後まで読んでほしいところ。本当の最後まで読んで初めて、なぜこの小説がレジェンド扱いされているのかが分かります。読み終わったときには、衝撃で呆然とするはずです。最後になってようやく、これまでグロ要素に隠されていたミステリーとしての上手さに気付く、そういう仕掛けになっています。
とんでもなくおぞましく、気持ちの悪い物語ですが、超有名作ということもあり、一度は挑戦してみるべき作品だと思います。
人間の顔は食べづらい:白井智之
次に紹介するのは、白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」です。
食用として人間のクローンを飼育するようになった日本。クローン人間飼育施設で働く和志は、除去したはずの生首が商品ケースから発見された事件の容疑者にされ・・・。
あらすじから見ても分かりますよね、読む人を選ぶ作品だってことが。そもそもこの白井智之さんという作家さん自体が、癖の強い、言ってしまえば悪趣味な作風のミステリーを多く書いている方で、その個性的な世界観と、しかし、それに頼りきらずにしっかりとミステリーとしても秀逸であることから、高い評価を受けている作家さんです。
この作品は、そんな白井智之さんのデビュー作。デビューからすでに世界観が確立されています。「食用のクローン人間」という、倫理的にかなりアウトな存在を前提に話が進んでいくのですが、この時点で想像できるように、グロ描写がそこそこ。けれど、個人的にはあらすじから覚悟していたほどグロくはなかったです。
そして、悪趣味さに一旦目をつぶるとするならば、特殊設定もののミステリーとしてとても優れた作品。特殊設定もののため、話の展開にも飽きが来ず、夢中になって一気読みできます。そして、その世界観の癖の強さからして、ミステリーとしてもぶっ飛んだトリックを駆使してくるのかと思いきや、その謎解きは意外と論理的で、伏線もきっちり回収され、わりとちゃんとしたミステリーで、楽しめました。
あらすじやタイトルから敬遠してしまわず、ぜひ挑戦してみてほしい作品です。
独白するユニバーサル横メルカトル:平山夢明
次に紹介するのは、平山夢明さんの「独白するユニバーサル横メルカトル」です。
タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語るのは、主人とその息子の恐ろしい所行。(「独白するユニバーサル横メルカトル」)。学校ではいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が絶望の果てに救いを求めたのは・・・(「無垢の祈り」)。奇跡のホラー短編集。
「このミステリーがすごい!」の2007年版で国内1位をとっていた作品だったので、軽い気持ちで読んでみたのですが、とんでもなかったです。正直好きか嫌いかと言われると、私は好きではなかったのですが、その世界観や作風が他に類を見ない唯一無二のものだと思ったし、読書好きからの評価も高い作品なので、紹介したいと思います。
短編集なのですが、どれもまあ癖が強い。グロテスクで、残酷で、そして、何が何だかよく分からないまま、その強烈な描写によってぐいぐいと無理矢理物語の世界に引きずり込まれていく感じ。うえ、と嫌悪感に顔をしかめて目を逸らしたくなりつつも、やはりちらちらと読み進めてしまう、不思議な魔力のようなものがある短編集でした。これを書いた平山さんの頭の中がどんな風になっているのか見てみたい気持ちです笑。
ただ、そんなすごい引力のある短編集をどうしても私が好きになれなかったのは、ただグロテスクなだけではなく、ちょっと「汚い」描写が多かったから。世界観自体はすごいなと思ったんですけど、そのせいで、気分が悪くなってしまい、読み進めるのがキツかったです。正直あまり大きな声で人におすすめできる小説ではないかも。
よい意味でも悪い意味でも、これを読んで私が受けた衝撃の大きさは、これまでの読んできた本の中でも1,2を争うくらいです。興味のある方は、ぜひ“自己責任で”読んでみてください。
アリス殺し:小林泰三
次に紹介するのは、小林泰三さんの「アリス殺し」です。
最近、不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかりみる大学院生の栗栖川亜理。夢の中でも現実でも怪死事件が相次ぎ、やがて亜理は、夢と現実の死がリンクしていることに気が付くのだが・・・。
「玩具修理者」の作者でもある小林泰三さん、この記事で二回目の登場です。
不思議の国のアリスの世界が絡んだ、特殊設定もののミステリーとなっています。まずストーリーからして面白く、ぐっと引き込まれました。また、不思議の国のアリスという童話が絡んでいることもあり、全体的な雰囲気はメルヘンで、ところどころコミカルで滑稽、しかしそんな可愛らしい世界の中で起こるのは、邪悪で残酷な殺人事件・・・そのアンバランスでシュールな世界観がとてもよかったです。また、最後には、この特殊設定を最大限に活かした驚愕のトリックが仕掛けられており、ミステリーとしても文句なしに面白いです。
しかし、やはり小林泰三さんの作品とあって、癖の強さが目立ちます。何よりも、死亡シーンのグロテスクなこと。必要以上に残酷に、そして気持ち悪く描写されているように感じてしまって、何もここまで・・・と少し辟易してしまいました。まあ、他の著作を見るにつけても、おそらく小林さんの趣味なんでしょうが、せっかく話はめっちゃ面白いんだから、もう少し残酷描写を控えたらもっと読みやすいのになあ、と少し残念。
ただ、ミステリーの面白さでは、個人的に歴代でも上位に食い込むレベルなので、グロに耐えられる人にはおすすめします。
レプリカたちの夜:一條次郎
次に紹介するのは、一條次郎さんの「レプリカたちの夜」です。
動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時過ぎだった。そこから往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。
これは、最初から最後までずっと「?」を頭に浮かべながら読みました。「これはなんなんだろう」と思いながら読んで、読み終わっても、「これはなんだったんだろう」という感じの小説でした。あらすじを読んで、「どういう話なのかよく分からないな」と思ったと思うのですが、読んでいてもよく分かりませんし、読み終わっても分かりません笑。
けれど、世界観の独特さがとても強烈に印象に残る小説です。次々に起こる脈絡のない奇想天外な出来事や登場する癖の強い人々は、現実なのか妄想なのかも曖昧で、今何が起きていて、どうしてそんなことが起きているのか、それもさっぱり分からず、ただ起こる出来事を「・・・?」と思いながら、追っていく・・・正直物語として成立しているのかすらも危うい、そんな小説ですが、それでも、不思議と、それでいいんだという気もします。意味が分かる必要はなくて、ただ独特で、シュールで、カオスで、どこか哲学的で壮大なこの世界観を楽しむ、そういうものなのかな、と。そう思わせられるのは、作者の圧倒的な筆力によるところが大きいでしょう。
ストーリーや伝えたいことがしっかりとしている小説を好む人は、この曖昧で混沌に満ちた小説は合わないかもな、と思います。けれど、私個人的には好きでしたし、「よく分からないけど、なにかただごとでないものを読んだ」という気がしました。一風変わった作品に挑戦してみたい人はぜひ。
姑獲鳥の夏:京極夏彦
次に紹介するのは、京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」です。
東京・雑司ヶ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20ヶ月も身籠もったままで、その夫は密室から失踪したという・・・。古本屋にして陰陽師が憑き物を落とし事件を解き明かす人気シリーズ第一作!
長い間多くの人に愛されている「百鬼夜行シリーズ」の第一作であり、かつ、今やミステリー界の重鎮となった京極夏彦さんのデビュー作という記念碑的な傑作です。
ある病院で起こる忌まわしい事件を描いたミステリー小説で、終始鬱々としているし、文章も古風なため少し読みづらいのですが、読み進めるにつれて、その独特の世界観に引き込まれます。どこか心許ないような、自分のいる世界が正常なのかどうか分からなくなるような、そんな曖昧で不安定で、ときに醜悪で残酷で、でもどこか美しい、そんな小説です。
万人におすすめできないな、と思うのは、まず少し文章が小難しいということ。特に、わりと序盤の方で挟まれる、探偵役の中禅寺による長々とした蘊蓄は、このシリーズでは名物といってもいいものなのですが、初めてこのシリーズを読む人には少し高い壁かもしれません。現に私もここで何度か挫折しました。また、ミステリーとしても、賛否両論が分かれる小説なのかな、とは思います。小説としての面白さはきっと認める人が多いと思いますが、ミステリーとしてどうなの?と厳しい人なら思うのでないかな、と。(個人的にはあり。)
万人にはおすすめできないと書きましたが、個人的には大好きな、忘れられない小説です。読書初心者にはあまりおすすめ出来ませんが、ある程度慣れてきた人は、挑戦する価値のある一冊だと思います。
まとめ
いかがでしたか?
決して万人受けではないながらもコアなファンを持つ、そんなイメージのある小説を集めてみました。どれも一癖も二癖もあるような作品ですが、一読の価値はある面白いものばかりです。あまり怖がらずに、手に取ってみてほしいです。ただ、苦手な人は無理しないように。
この記事で紹介した作品の中で、みなさんにはまる小説が1冊でもあれば幸いです。
では、ここらで。
よい読書ライフを!
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