山奥の村を舞台にしたミステリー・ホラー小説10選!

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 みなさんこんにちは、らくとです。
 突然ですが、みなさん、日本の「村」というものにどんなイメージを持っていますか?
 村人同士の繋がりが強く、噂がすぐに広まる。古い因習や言い伝えが未だに残っている。村の者と余所者が明確に区別されていて閉鎖的。地主のような権力を持つ家があって、村人はみんなその家に従っている・・・などなど、一般的にはそのようなイメージかもしれません。
 日本のミステリー小説やホラー小説には、そのような村を舞台にした作品が多くあります。そのような作品はどれも、どこかおどろおどろしい雰囲気を持ち、非日常へと私たちを誘います。そして同時に、どこか郷愁を感じさせてもくれます。
 今日はそんな、日本の村を舞台にしたミステリー小説・ホラー小説を10作、紹介したいと思います。

村を舞台にした小説10選

 では、早速紹介していきたいと思います。

貘の檻:道尾秀介

 1冊目は道尾秀介さんの「貘の檻」です。
 大槇辰男はある日、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子を駅で見かける。32年前、父に殺されたはずの女が、なぜ・・・?だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられて命を落とす。辰男は息子の俊也を連れてO村を訪れることを決意するが・・・。
 下に無数の地下水路が張り巡らされた山奥の寒村、そしてそんな村で何十年も前に起こった殺人事件の謎が、今明かされる・・・。面白くないわけがないと思います。
 いったい誰が、誰に何をしたのか。多くの人々の様々な感情や思惑が入り乱れた複雑なミステリーでした。道尾さんらしく、終始鬱々していましたが、それがまたO村の雰囲気ともマッチしていて、より物語に入り込めたと思います。

背の眼:道尾秀介

 2冊目に紹介するのは、同じく道尾秀介さんの「背の眼」です。
 児童失踪事件が続く白峠村で、作家の道尾が聞いた霊の声。恐怖に駆られた彼は、霊現象探求所を営む真備のもとを訪れる。そこで目にしたのは、被写体の背中に眼が映り込む4枚の心霊写真。それらはどれも白峠村周辺で撮影されたもので、しかも彼ら全員が撮影後数日以内に自殺したという・・・。
 道尾秀介さんのデビュー作で、第5回のホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した作品です。
 天狗伝説の残る、山奥の白峠村という村が舞台です。ホラーとミステリーが見事に融合した作品で、ところどころゾッとしながら読み進めました。特に最初に道尾が聞いた霊の声の意味が分かったときは背筋がぞわっとして鳥肌が立ちました。
 ミステリーとしてもホラーとしても楽しめる一級の作品です。

隻眼の少女:麻耶雄嵩

 3冊目に紹介するのは、麻耶雄嵩さんの「隻眼の少女」です。
 山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人として疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人を解決するが、その18年後、再び悲劇が・・・。
 日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した本格ミステリです。
 1985年の事件と、その18年後の2003年の事件を描いた2部構成になっています。村全体で代々受け継がれるスガル様という生き神様の信仰、そこで起きる少女の首切り殺人、そして18年の時を経て再び繰り返される惨劇・・・村もののミステリーの面白い要素がぐっと詰まっています。
 読んでいただくと分かりますが、全体的に横溝正史作品に似た雰囲気があり、金田一シリーズが好きな人は特に楽しめると思います。

厭魅の如き憑くもの:三津田信三

 4冊目に紹介するのは、三津田信三さんの「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」です。
 谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた神々櫛村。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起きる。
 ホラーの名手・三津田信三さんによる人気シリーズ、「刀城言耶シリーズ」の第1作目です。
 「ホラー・ミステリー」という言葉がぴったりで、ホラーの恐怖とミステリーの面白さが見事に合わさった一作となっています。カカシ様や厭魅(まじもの)などの伝承が残る村の異様な雰囲気、そして村や山に潜む、得体のしれない何か恐ろしいもの、そしてそんな中で起こる人によるものか化け物によるものか分からない怪死事件・・・。村ものが好きな人にとってはわくわくする要素がたくさんあります。

のぞきめ:三津田信三

 5冊目に紹介するのは、同じく三津田信三さんの「のぞきめ」です。
 辺鄙な貸別荘地を訪れた茂留たちは、禁じられた廃村に迷い込み、おそるべき怪異に見舞われる。民俗学・四十澤が昭和初期に残したノートから、そこは「弔い村」の異名を持ち、「のぞきめ」という憑き物の伝承が残る呪われた村だったことが明らかに。作家の「僕」が知った二つの怪異譚。その関連と驚きの真相とは?
 一つの村を舞台に、廃村になったそこで現代に起きた怪異と、昔にその村で起きた怪異を2部構成で描いています。ただ怖いだけのホラーではなく、民俗学という見地から怪異を分析しているところが興味深いです。そして、全てがノンフィクションのように書かれており、これを読んでしまった自分たちにも怪異が忍び寄ってくるのではないか・・・そんな風に思わせてきて、背筋がぞっとする一冊です。

八つ墓村:横溝正史

 6冊目に紹介するのは横溝正史の「八つ墓村」です。
 鳥取と岡山の県境の村。かつて戦国の頃、三千両を携えた8人の武者がこの地に落ち延びた。だが欲に目が眩んだ村人たちは8人を惨殺。以来この村は「八つ墓村」と呼ばれるように。そして大正××年、首謀者の子孫が突如発狂。村人32人を虐殺して行方不明になる。20数年後、再び怪奇な殺人事件がこの村を襲う・・・。
 かの有名な金田一耕助シリーズの代表作の一つです。実際に昭和に日本の村で起きた津山30人殺しという事件がモデルになっていることでも知られています。
 閉鎖的な村の中で起こる無残な連続殺人を描いており、ミステリーではありますが、ある意味ホラーに分類してもいいほど、おぞましい物語です。次から次に事件が新しく展開され、読者も登場人物たちと一緒に、謎と恐怖へと引きずり込まれていきます。

悪魔の手毬唄:横溝正史

 7冊目に紹介するのは、同じく横溝正史の「悪魔の手毬唄」です。
 岡山と兵庫の県境。四方を山に囲まれた鬼首村。この地に昔から伝わる手毬唄が引き起こす恐ろしい事件。その唄の歌詞の通りに人が死んでいくのだ!事件の真相を探るうちに、20年前に迷宮入りになった殺人事件が浮かび上がる・・・。
 こちらも金田一耕助シリーズの代表作の一つで、日本の見立て殺人ものとしても有名な一作です。
 見立て殺人もの自体が、ただでさえ不気味で人の恐怖を煽るようなジャンルなのに、それが閉鎖的な村の中で起こるとなると、恐怖と不気味さはさらに増します。村ものと見立て殺人ものをかけあわせた、完成度の高い一作となっています。

首挽村の殺人:大村友貴美

 8冊目に紹介するのは、大村友貴美さんの「首挽村(くびきむら)の殺人」です。
 岩手県にある鷲尻村。長く無医村状態が続いた当地に、待望の医師が赴任した。しかしその直後、彼は何者かに襲われ帰らぬ人に。巨熊に襲われたと噂される彼の代わりに赴任した滝本。だが、着任早々、彼は連続殺人事件に遭遇することになる・・・。
 横溝正史ミステリ大賞を受賞し、21世紀の横溝正史誕生と言われた作品です。
 過疎化や無医村などの諸問題を抱える現代の村を舞台にした連続殺人を描いています。そのおどろおどろしい雰囲気はまさに現代版の横溝正史といってもいいでしょう。そして連続殺人に加えて、この物語に恐怖を与えているのは熊の存在です。圧倒的な力を持ち、出くわしたら絶望するしかない巨熊が辺りをうろついている村。そこで起こる連続殺人・・・二重の恐怖とスリルを楽しめる一作です。

屍鬼:小野不由美

 9冊目に紹介するのは、小野不由美さんの「屍鬼(しき)」です。
 人口僅か1300、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は幕を開けた。山深い集落で発見された3体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したように散乱していた・・・。それを皮切りに連続する不審死。これは殺人か、それとも未知の疫病か・・・。
 上に貼ってあるリンクでも分かる通り、文庫にして5冊にもなる、かなりの大作です。
 長い物語だけあって登場人物が多いので、最初の方はその紹介と人間関係の説明が続きますが、物語が動き始めると、長さなど感じないくらいに面白くて、一気読みしてしまいます。村を少しずつじわじわと覆い始める死の影と、その裏で暗躍する得体の知れないものの存在・・・怖くもありますが、怖いというよりも、一つの物語として、「すごい」という言葉が合う、読み応えのある小説でした。
 この小説はこちらの記事でも紹介しているので、興味があれば読んでみてください。↓
アニメ化された小説15選! | らくとの本棚 (rakutonohondana.com)

カクレカラクリ:森博嗣

 10冊目に紹介するのは、森博嗣さんの「カクレカラクリ」です。
 廃墟マニアの郡司と栗城は、同じ大学に通う花梨に招かれて鈴鳴村にやって来た。そこで彼らを待ち受けていたのは、奇妙な伝説だった。明治時代に作られた絡繰りがこの村のどこかに隠されていて、120年後の今年に動き出すというのだ!2人は隠された絡繰りを探し始めるが・・・。
 村ものというとおどろおどろしいとか不気味だとかそういうイメージがあると思いますが、こちらはそれに反して、村を舞台にしていながらも、とても爽やかな物語となっています。120年という途方もなく長い間村のどこかに眠っていた絡繰りが、今年動き出す・・・このあらすじだけで、ロマンを感じて何だかわくわくしませんか
 謎とわくわくに満ちた夏の一コマをぜひお楽しみください。
 この小説はこちらの記事でも紹介しているので、興味があれば読んでみてください。↓
 夏に読みたい小説17選! | らくとの本棚 (rakutonohondana.com)

まとめ

 どうでしたか。
 この記事では、村を舞台にしたミステリー・ホラー小説を10冊、紹介しました。
 ホラーにしろミステリーにしろ、村というのはどこか独特の雰囲気があり、現代社会に生きる私たちを非日常へ誘ってくれます
 そんな村を舞台にした小説・物語に興味があるという人は、ぜひ、10冊の中から気に入ったものを選んで、読んでみてください。
 では、ここらで。
 いい読書ライフを!

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