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みなさんこんにちは、らくとです。
「世界は誰かの仕事でできている」――とあるCMで使われたフレーズですが、初めて聞いたときからずっと素敵な言葉だなあ、と思っています。自分の身の回りに当たり前にあるものや、自分が普段当たり前にしていること、そういった全てのものに、「仕事」として携わっている人々が必ずいて、そこには私たちの知らない世界があって、私たちの知らない言葉が飛び交っていて・・・そう思うと、この世界というのはよく知っているように思えても実は知らないことだらけだなあ、と思って、何だかわくわくします。
なんの仕事に就くかというのは、人生においてとても重要な選択です。大人になってからの時間の大半は仕事に費やされるからです。仕事が楽しくないと人生は楽しくない、とまでは言えないですが、少なくとも、仕事が楽しいと人生は楽しい、というのは言えるのではないでしょうか。
今回の記事のテーマは「ちょっと変わったお仕事小説」。名前の通り、あまり人には知られていなかったり、世間で注目されたりしないような、そんな仕事に人生を捧げる人たちを描いた小説をメインに紹介していこうと思います。知らなかった世界を垣間見ることができるのも魅力ですし、登場人物たちの仕事にかける思いや真剣さ、プロ意識などが伝わってきて、「自分も今している仕事のプロフェッショナルになろう!」という気持ちになれると思います。
ちょっと変わったお仕事小説10選!
では、さっそく紹介していきます。
舟を編む:三浦しをん
まず紹介するのは、三浦しをんさんの「舟を編む」です。
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部へ引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の編集に向けた、彼らの長い長い旅が始まる。辞書作りに人生を捧げる人たちの情熱と思いが胸を打つお仕事小説。
お仕事小説といえば、こちらを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。本屋大賞を受賞した、三浦しをんさんの代表作です。「辞書作り」というかなりニッチな仕事をテーマにしており、一見何だか地味な印象を持つかもしれませんが、読めば読むほど、日本語というものの奥深さや、編集部のみんなの言葉へのこだわり、それぞれの辞書にかける思い、そしてよいものを作るために妥協を許さない姿勢・・・いろんなものにぐっと心を掴まれて、辞書作りという世界に引き込まれていきます。私も小さい頃によく広辞苑で言葉を調べたりしていましたが、このどんな言葉でも教えてくれる分厚い本がどうやって風に作られているのか、誰が作っているのか、そんなことは考えてもいませんでした。あの辞書の背景に、実際にこんな人々がいたかもしれないと思うと、何だかロマンを感じます。ただ、最近は言葉もネットで調べる人が多くなり、こんな仕事も失われてしまうかもしれないと思うと、寂しさも感じます。
みかづき:森絵都
次に紹介するのは、森絵都さんの「みかづき」です。
昭和36年。放課後の用務員室で子どもたちに勉強を教えていた大島吾郎は、ある少女の母・千明に見込まれ、学習塾を開くことに。これが、何代にもわたる大島家の波瀾万丈の人生の幕開けだった――。
こちらは、何代にもわたって塾経営に人生を捧げた一家の、長い長い物語です。塾というと、学校の補助的立場という印象が強く、教育という観点から見るとどうしても脇役という感じがしてしまいますが、この小説を読むと、塾とは、学校にはできないことをする、立派な一つの教育の場であることが分かります。そして、企業としての利益や時代の流れ、他の塾との生き残り競争などに揺さぶられながらも、教育とはどうあるべきか、塾とはどうあるべきか、に向き合い続けてきた一つの家族の栄光と挫折の年月に、きっと胸が熱くなるはずです。受験戦争が激しくなりつつある今では、塾の役割も大きくなっていますが、こんな時代でも、塾が、この一家が教えてくれた、塾のあるべき姿を持ち続けてくれればいいな、と思います。
羊と鋼の森:宮下奈都
次に紹介するのは、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」です。
高校生のときのある偶然の出会いにより、ピアノの調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合い、個性豊かな面々に囲まれながら、外村は、調律の森へ深く分け入っていく。
第13回の本屋大賞を受賞した作品です。あらすじにもある通り、ピアノの調律師として成長していく青年の姿を描いた作品となっています。ピアノの調律、というとかなりマニアックで、音楽的センスが全くない私みたいな人間にとってはまったく未知の世界だったのですが、この作品を読むと、その意外な奥深さに驚かされます。正直、調律ってピアノの不具合を正すだけの作業かと思っていましたが、調律によって音が変わることを知り、びっくりしました。その人にぴったりな音を探し、音と向き合う・・・そのときの外村の音を表現するセンスがとても美しく、一緒にその風景の中に入っていっているようなそんな迫力がありました。何よりも外村が調律を愛していて、心から愛しているものにのめり込める幸せも伝わってくる、まさに至極のお仕事小説です。
本日は、お日柄もよく:原田マハ
次に紹介するのは、原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」です。
想いを寄せていた幼なじみの結婚に最悪の気分だったOLのこと葉。しかし、その結婚式で、涙が出るほど感動的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター・久遠久美の祝辞だった。衝撃を受け、魅せられたこと葉はすぐに弟子入りするが・・・。目頭が熱くなるお仕事小説。
結婚式や入学式、卒業式・・・みなさん、人生の中で誰かのスピーチを聴くことが何度もあったと思いますが、その中で印象に残っているスピーチはありますか?個人的には、スピーチって形式的で退屈なもの、というイメージがあったのですが、それを変えてくれたのがこの一冊です。スピーチの文面を考える仕事、スピーチライターが、この作品の主役です。一番伝えたいことを伝えるために、どんな言葉を使うのか、どこを強調するのか、どんな話し方で、どこを見て話すのか・・・そういうテクニックを知れることも興味深いです。けれど、一番大事なのは話者の「伝えたい」という気持ち。その気持ちに全力で応えようとする主人公や周りの人たちの思いに、思わずぐっと拳を握って応援したくなります。「言葉で伝える」ことの楽しさ、「言葉が伝わる」ことの幸せ、それが詰まった一冊です。
神去なあなあ日常:三浦しをん
次に紹介するのは、三浦しをんさんの「神去なあなあ日常」です。
18歳の平野勇気は、高校を出てすぐ、三重県の林業の現場に放り込まれてしまう。携帯も通じない山奥で、横浜育ちの勇気は無事一人前になれるのか・・・?四季の美しい神去村で、勇気と個性的な村人たちが繰り広げる騒動記!
林業というのは、山を育て木材を作り出すというとても大事な仕事ですが、農業や漁業と比べてあまりどんなことをしているのか想像がつかない、いうなればあまり身近でないような、そんなイメージが私の中ではありました。この小説は、そんなぼやっとしていた林業や山仕事、そしてそれを生業にする人たちのイメージを、生き生きとした魅力的なものに変えてくれた一冊です。
高校を卒業したばかりの主人公・勇気がいきなり林業の現場に放り込まれ、びしばしと容赦なくしごかれながらも、林業の仕事や村での生活にやりがいや楽しさを見つけていく、という話です。横浜で育ったシティボーイの勇気にとって、いきなりの山暮らしはけっこう絶望的な状況だったと思うのですが、根が前向きなのか、その語り口は愚痴などを挟みながらも軽快で明るく、くすくすと笑いながら読みました。山や木とともに生きる暮らしは、大変なことはありながらも、どこかゆったりとしていて、まさに「なあなあ」という言葉がぴったり。仕事以外にも、恋をしたり村の祭りに参加したり、他にも色々事件が起き、面白くてページをめくる手が止まらない、最高の林業小説です。
ギンカムロ:美奈川 護
次に紹介するのは、美奈川護さんの「ギンカムロ」です。
幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日祖父からの電話で四年ぶりに帰郷した昇一は、花火職人として修行中の風間絢に出会う。人々の花火に託した思いを描き出す、希望と再生の物語。
夏の風物詩、花火。毎年、綺麗だなあ、と眺める花火ですが、それを誰が作っているのか、そこにどんな技術や、手間や、思いが込められているのか、考えたことはありますか?一瞬だけ夜空に華々しく咲いて、すぐに散っていく花火。その一瞬を、誰かの心に永遠に残すために、人生をかけて花火を作り続ける・・・これは、そんな花火職人たちの話です。ある町で重なった不幸な出来事によって、様々な思いを抱えて生きてきた人々。そんな彼らの思いが託された花火が咲く一瞬は、どれほど美しいことでしょうか。この作品を読めば、毎年何気なく見ていた花火が、少しだけ違った風に見えるかもしれません。ぜひ読んでみてください。
和菓子のアン:坂木 司
次に紹介するのは、坂木司さんの「和菓子のアン」です。
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子は、ちょっぴり太めの18歳。個性的な店長や同僚に囲まれながら、和菓子にまつわるささいな謎の答えを見つけていくうちに、和菓子の魅力に目覚めていく。美味しいお仕事ミステリー。
和菓子というと、若い人などは食べる機会が少なく、洋菓子に比べたら少し渋いというか、地味な印象があるかもしれません。けれど、実は和菓子の世界はとても奥深くて面白いのだということを、優しく、楽しく教えてくれるのがこの作品です。実は和菓子には、分かるとへえー、と感心してしまうような趣向がたくさん凝らされているのです。季節を感じられる形や味であったり、言葉遊びが隠れていたり、歴史が感じられたり・・・一つ一つに意味があり、それを考えながら食べるのが、楽しみの一つでもあります。そして、この作品ではそれが、和菓子店にもたらされるささいな謎の答えを知るヒントになっており、日常の謎ものとしてもとても面白いです。
主人公の杏子はアンちゃんと呼ばれ、食べることが好きなぽっちゃり女子。明るく可愛らしい彼女と一緒に、和菓子の世界を少しだけのぞいてみたい人は、ぜひ、読んでみてください。
日の名残り:カズオ・イシグロ
次に紹介するのは、カズオ・イシグロの「日の名残り」です。
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら、様々な思い出が過ぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕や、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、邸内で催された重要な外交会議の数々・・・。失われつつある伝統的な英国を描いた、英国最高の文学賞・ブッカー賞受賞作。
ノーベル文学賞を受賞した英国の作家、カズオ・イシグロの代表作です。英国のある邸宅の執事として長年勤めてきた男が、短い旅の間に、執事として生きてきた自身の半生を回想するという話です。執事という職分についての語り手の並々ならぬ思いや誇り、こだわり、そして、それゆえの人生の栄光や悲劇を描いており、語り手にとっては執事というのは仕事というよりもむしろ「生き様」というべきものです。執事というと、スポットの当たることのない脇役なのですが、あくまでも脇役に徹して、何が起ころうとも取り乱さず厳格に邸を守る、そんな姿には、「品格」という言葉がよく似合います。もちろん、その中で失ったものや見過ごしたもの、無力感や後悔もたくさんあります。けれどだからこそ、執事として身を捧げた人生を、美しい英国の田舎の風景を背に辿っていくこの物語は、かけがえのないものとして、切なく、私たち読者の胸を打つのです。
「お仕事小説」というのは少しジャンルが違う気もするのですが、変わり種として、ぜひ読んでみてほしい一級の作品です。
この世にたやすい仕事はない:津村記久子
次に紹介するのは、津村記久子さんの「この世にたやすい仕事はない」です。
ストレスに耐えかね前職を去った私は、新たな仕事を探して職安へ。そこで紹介されるのは、隠しカメラを使った監視業務や、バスのアナウンス原稿作りなど、マニアックな仕事ばかり。仕事が変わると、世界も変わる。共感と感動のお仕事小説。
前の仕事を辞めて以来、職を転々とし、様々なマニアックな仕事に取り組む主人公の話です。今は転職が当たり前の時代で、一生一つの仕事、というのではなく、いろいろな仕事を試してみる機会というのが得やすい社会になっています。ただ、どんな仕事にも楽しさややりがいがあって、でも同時に、難しさやしんどさもあります。その楽しさとしんどさの折り合いを上手く付けながらみんな働いてるんだなあ、と、「仕事」についてしみじみと考えてしまいました。個人的に、タイトルがすごく好きでした。この世には想像もできないくらい色んな仕事があって、私たちの日常の全てに誰かの仕事があって、「仕事」である以上、それらは全てたやすくない。この世で働いてる全ての人に読んでほしい小説です。
鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ:川上和人
次に紹介するのは、川上和人さんの「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ」です。
鳥類学者には、スマートな頭脳に加え、体力が必須である。鳥に辿り着くまでに、過酷なフィールドワークが待っている。鳥の採血や、噴火する孤島への上陸、吸血カラス、蛾の襲来・・・。鳥に詳しくなくても絶対に楽しめる、汗と笑いの自然科学エッセイ。
こちらは、鳥類学者である著者が今までにしてきた鳥類研究の様子やその際のエピソードについて描かれたエッセイです。鳥類研究というとあまり我々一般人にはなじみがなく、私としては、バードウォッチングみたいなのどかなイメージがあったので、このエッセイは個人的にはけっこう衝撃的でした。鳥を研究するとなると、人間の方から鳥に近づいていかなければならず、つまりは自然の中に身を突っ込まねばならず、その環境はときにとても過酷なものとなります。でも彼らにそこまでさせるのは、尽きることのない鳥の興味。知りたい、という強い気持ちが、彼らを過酷なフィールドへと懲りずに赴かせるのです。タイトルに惹かれて興味を持ったのですが、彼らの鳥への気持ちは、もはや単純な「好き」という言葉では言い表せないものなのではないか、と思います。専門用語もそこそこ出てきますが、文章がユーモラスでウィットに富んでいるので、誰でも楽しんで読むことができます。鳥への興味はもちろん、学者という仕事への興味も湧いてくる作品です。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、少し変わった仕事をテーマにした小説を紹介させていただきました。世の中にはいろんな仕事があって、全ての仕事が世界を回している。少し変わった世界を覗きながら、働くことの楽しさや大変さを感じられるお仕事小説。気になるものがあったら、ぜひ手に取ってみてください!
そして、全ての働く人たちに幸あれ!
では、ここらで。
良い読書ライフを!

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