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みなさんこんにちは、らくとです。
みなさんは、”物語”の魅力は何だと思いますか?
私は基本的にフィクションを中心に本を読んでいます。私は、物語の魅力の一つは、人間の柔軟な発想力を存分に発揮できるというところだと思います。フィクションだからこそ、「現実ではそんなことありえないだろ」と思うようなことでも、その小説内では当たり前のようにして話を進めることができます。つまりは、作者はその発想力に任せて、現実から離れ、自由自在に物語を操ることが出来るのです。
この記事では、そんな物語の魅力が最大まで活かされた、斬新すぎるストーリー・設定を基に話が進んでいく小説を17冊、紹介したいと思います。「なんでこんなことが思いつくんだろう?」と作者さんの頭の中を覗いて見たくなるような、そんな「あらすじから既に面白い」小説を探している方はぜひ、この記事を参考にしてみてください!
斬新すぎる小説17選!
では、早速紹介していきたいと思います!
アリス殺し:小林泰三
まず紹介するのは、小林泰三さんの「アリス殺し」です。
大学院生の栗栖川亜理は、最近、不思議の国に迷い込むアリスという少女の夢ばかり見ている。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たその日、大学に行くと、玉子という綽名の研究員が屋上から転落して死亡していた。夢と現実の死はリンクしている・・・?そして、不思議の国ではアリスが一連の事件の犯人として指名されてしまい・・・。
私の中でぶっ飛んだ発想のミステリー小説というと真っ先に思い浮かぶのが、こちらの作品です。
『不思議の国のアリス』の世界と本格ミステリーを上手くかけ合わせた上で、邪悪で奇妙な小林泰三さん独特の色に染め上げた、そんな作品です。何かが狂っているような、どこかが歪んでいるような、でも目が離せない、そんな唯一無二の世界観が魅力です。
夢と現実がリンクするという設定だけでも既に面白いのですが、話は途中から更に突飛な方向へ向かいます。そして明かされるのは驚愕の真相。最初から最後までぶっ飛んだストーリーと世界観を貫き通し、でもしっかりとミステリーとしても面白い、ハイレベルな作品です。
ただ、少しグロテスクな描写が多いので、苦手な人はご注意ください。
世界から猫が消えたなら:川村元気
次に紹介するのは、川村元気さんの「世界から猫が消えたなら」です。
郵便配達員として働く30歳の僕はある日突然、脳腫瘍で余命僅かであることを宣告された。絶望している僕の前に現れた悪魔は、奇妙な取引を持ちかけてくる。それは、この世界から何かを消す代わりに一日命を延ばすというものだった・・・。
日本でかなり話題になり、映画化までされた作品です。
自分の命と引き換えに、世界から一つモノが消える・・・そんなかなり斬新なファンタジー設定で話が進んでいきます。電話や映画など様々なものが消えていく中、主人公は、そのものにまつわる思い出、そこに登場する人々に想いを馳せて、自分の人生を振り返っていくのです。
もし自分が主人公と同じ立場だったらどうするだろうか、どんな気持ちだろうか、そう考えさせられ、今という時間をもっと大切に生きよう、美しいものをたくさん見て、忘れたくないことをたくさん増やそう、そんな風に思える作品です。
四畳半神話大系:森見登美彦
次に紹介するのは、森見登美彦さんの「四畳半神話大系」です。
私はバラ色のキャンパスライフとはほど遠い生活を送る、冴えない大学3回生。悪友に振り回され、変わり者の師匠に変な要求をされ、孤高の乙女にはなかなか近づけない。ああ、もう一度1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、面白おかしな青春ストーリー。
これは冴えない非リア男子大学生の、馬鹿馬鹿しくも愛すべき大学生活を描いた話ですが、変わっているのは、章ごとに別の並行世界が描かれているということです。主人公がそれぞれ別々のサークル・団体に入ったらどんな学生生活が待っていたのか、それを4パターン、見ることができます。
とはいっても、毎回章の最初が、冴えない大学生活に対する主人公の嘆きで始まるので、結局どう足掻いてもバラ色のキャンパスライフは望むべくもない、というのが哀しくも面白いところです笑。
そして、この作品で何よりも特筆すべきは、森見ワールドが大炸裂しているということ。京都の街を舞台に好き勝手に暴れ回るヘンテコな登場人物たちと、それに振り回される主人公・・・思わずクスッと笑ってしまうような、奇天烈で馬鹿馬鹿しい独特の世界観に惹きこまれる人も多いはずです。
よるのばけもの:住野よる
次に紹介するのは住野よるさんの「よるのばけもの」です。
夜になると、僕は化け物になる。ある日、化け物になった僕は忘れ物を取りに学校へ忍び込んだ。誰もいないと思っていたのに、そこには、変わっているためクラスで浮いている同級生、矢野さつきがいた・・・。
夜が来ると化け物になる少年・・・なかなかない設定ですよね。しかも面白いのは、ファンタジー要素はほとんどそこだけで、実際に描かれているのは、教室内での生徒達のリアルな関係性や心情だということ。学校という場の息苦しさを思い出して胸がきゅっとなる場面も多々ありました。
夜の教室で言葉を交わす僕と矢野さつきは、昼の教室では決して友好的に交わることのない二人。いじめる側の僕といじめられる側のさつき・・・その関係性を一旦忘れ、化け物と人間として二人は普通に話をします。その結果見えてきたものとは、本当の自分とは・・・深く考えさせられる話です。
個人的には、今のところ住野よるさんの作品の中で一番好きな作品です。
屍人荘の殺人:今村昌弘
次に紹介するのは、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」です。
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は曰く付きの映画研究部の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪れた。しかし一日目の夜、肝試しに出かけた一同は、想像もしなかった事態に巻き込まれ、ペンションに立て籠もる。一夜明け、ペンション内に一体の惨殺死体が・・・
鮎川哲也賞受賞作で、2017年のミステリーランキングを席巻した本格ミステリーです。
クローズド・サークル状態で殺人事件が起こり、探偵がその真相を推理する・・・この流れを見ると正統派の本格ミステリーのように見えますが、この作品のひと味違うところは、そのクローズド・サークルの作り方です。あらすじに「想像もしなかった事態」とありますが、まさにその通りで、信じられないような出来事が突如起こり、それが悲劇の幕開けとなります。その「信じられないような出来事」というのがなんなのかは、読んでからのお楽しみです。
斬新なクローズド・サークル、そしてとんでもない危機的状況の中で展開される連続殺人と探偵の理路整然とした推理をお楽しみください。
人間の顔は食べづらい:白井智之
次に紹介するのは、白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」です。
安全な食料の確保のため、「食用クローン人間」が育てられている日本。クローン施設で働いている和志は、クローン人間の首を切り落として発送する業務についていた。しかしある日、首なしで出荷したはずのクローン人間の商品ケースから生首が発見されて・・・
あらすじを読んでいただいたら分かるように、かなり悪趣味な世界設定です。クローンとは言え、食べるために人間を育てるというのはかなり倫理観がとち狂っていますし、グロい表現も多々あります。あくまで小説だと割り切れる方のみお読みください。
しかし、この作品のよいところはただ悪趣味でグロテスクなだけではなく、その特殊な設定を上手く活かした、唯一無二の本格ミステリーだということです。ミステリーとしてとてもレベルが高く、そのため、えげつない世界ではありながらも、ぐいぐいと引き込まれます。最後にはあっと驚くこと間違いなしです。
孤島の来訪者:方丈貴恵
次に紹介するのは方丈貴恵さんの「孤島の来訪者」です。
殺された幼なじみの復讐のためにテレビ局に入った竜泉佑樹。ターゲットの3名を含む9名で曰く付き無人島のロケに参加することになったが、初日からターゲットの一人が殺されてしまう。自分が手を下すつもりだったのに、一体誰が・・・?しかしその犯人探しは意外な展開へ・・・
あらすじだけ見るとただの「絶海の孤島」もののミステリー小説に見えるかもしれませんが、そんな簡単な話ではありません。これは特殊設定もののミステリー。それもかなり特殊です。よくもこんなことが思いつくなあ、と思います。
途中までは普通のミステリーのように進んでいきますが、ある人物のある一言で、事態ががらりと一変し、特殊設定ものであることが分かります。それがどんな一言か、そしてどんな特殊設定なのかは、読んでからのお楽しみということで、ここで書くのは控えておきます。
少し推理や謎解きが複雑ですが、めちゃくちゃ面白いので、ぜひ読んでみてください。
なお、話自体が繋がっているわけではないのですが、実はこちらは一応シリーズものになっているので、順番通りに読みたい方は1冊目の「時空旅行者の砂時計」からどうぞ。↓こちらはタイムトラベル系の特殊設定ものです。
残像に口紅を:筒井康隆
次に紹介するのは、筒井康隆さんの「残像に口紅を」です。
「あ」が使えなくなると、「愛」と「あなた」も消えてしまった。世界からことばが一つ、また一つと消えていく・・・言語が次々と消滅していく中で生活する小説家を描いた、究極の実験的小説。
これはかなり変わった小説でした。かなり前に書かれた作品なのですが、最近になってSNSなどを通じて流行ったようです。
物語が進むごとに文字が消えていく、というかなり特殊な設定です。しかも文章上でその文字が入った言葉が使えなくなる、というだけではなく、その作品の中の世界でも、その言葉、かつその言葉が表すものや概念自体が消滅するという、ぶっ飛んだルール。(つまり、「あ」が消えるとその世界から「朝」という概念も消える、という感じです)
私たちの周りに当たり前にあったもの、慣れ親しんでいたものが次々と消えていく世界で、それでも普通に生活を続けようとする一人の小説家の姿を描いています。何かが消えた、ということは朧気に分かる。でもそれが何だったのかもう思い出せない・・・その切なさというか、微かに残る喪失感が印象的でした。
そもそも使える文字が少なくなっていくのに小説を続けられるのか、と疑問に思うかもしれませんが、残っている言葉で上手く言い換えることにより、これが意外と続けられます。ちょっとした言葉遊びを楽しめ、日本語の奥深さも実感しました。
正直、かなり意味の分からない世界観で、完全についていけたかというと微妙なのですが、物書きとして生きている作者が、「言葉」というものと極限まで向き合った結果の小説なのだろうと思います。この作品でしかできない読書体験をぜひ。
人格転移の殺人:西澤保彦
次に紹介するのは、西澤保彦さんの「人格転移の殺人」です。
突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に則って6人の人格が入れ替わり、隔絶された空間の中で殺人事件が起きる。犯人は誰の人格で、その犯行の目的は何なのか?
私自身が、あらすじに惹かれて買った小説です。謎の装置によって人格が入れ替えられた状態で殺人事件が起こるというかなりの特殊設定です。
そもそも肉体と人格を切り離して入れ替えるという発想自体が面白いですし、それにミステリーが掛け合わされるとなれば、面白くないわけがありません。現にとても面白く、夢中になって一気読みしました。
ただ、どの人格が誰の身体に入っているのか、人格転移が起こる度に把握しないといけないので、それが少し面倒でした笑。でも、その「人格が転移する」という特殊設定とその際の独特なルールをフル活用したミステリーはすごく読み応えがありました。
まさに「奇想天外」という言葉が似合う本格ミステリーを、ぜひ。
偉大なるしゅららぼん:万城目学
次に紹介するのは、万城目学さんの「偉大なるしゅららぼん」です。
高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやってきた日出涼介。実は日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族で、涼介が本家へ来たのはその力を鍛えるため。しかし、本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎に振り回されたり、同じような力を持つライバルの一族がクラスメイトにいたり・・・大変な毎日が幕を開ける!
日常の中に奇想天外な非日常を放り込むという作風で知られる万城目学さんですが、この作品はその「万城目ワールド」を存分に楽しめる作品です。
琵琶湖から授かった超能力を使った一族の奇妙な争いに主人公が巻き込まれる話ですが、とにかくストーリーが面白いです。何と言えばいいのか、壮大だけど馬鹿馬鹿しいというか、ふざけたことを真面目にやるというか、そういった世界観で話が進んでいきます。
「シュールな少年漫画」という感じで、始めは「何じゃこりゃ」とその世界観に戸惑うかもしれませんが、一度入り込んでしまえばこっちのもの。少々長めの話ですが、その面白さゆえ、読了まではあっという間です。
空の中:有川ひろ
次に紹介するのは、有川ひろさんの「空の中」です。
200×年、謎の航空機事故が相次いだため、パイロットらは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通する空域で彼らが見つけた恐るべき秘密とは?一方地上では、子どもたちが海辺で不思議な生物を拾う。二つの秘密が合わさったとき、人類を前代未聞の危機が襲う・・・!
「自衛隊三部作」という有川さんの人気シリーズのうちの一冊です。
一言でいうと、未知の奇妙な生物の発見により人類が危機にさらされる話ですが、とにかくそのストーリーが奇想天外で面白い。これからどうなるのか、何が起こるのか、早く知りたくて夢中になって読みふけりました。
話自体はすごく非現実的で奇妙ですが、生物に対する政府の対応や、その生物を分析し、現実のものとして受け入れていく人々の様子はやけにリアルで、その分もし実際にこういうことが起こったらどうなるのだろうと想像力をかき立てられて、よりいっそう面白かったです。
まさに極上のエンターテインメントと言える作品です。ぜひお楽しみください。
ちなみに自衛隊3部作のうちの残り2作も、奇想天外なストーリーが面白い作品です。リンクを貼っておくのでぜひ。
・塩が世界を埋め尽くし崩壊寸前の社会と、その中で暮らす男女を描いた、著者のデビュー作「塩の街」↓
・巨大な赤い甲殻類の大群と警察・自衛隊の凄絶な戦いを描いた「海の底」↓
むかしむかしあるところに、死体がありました。:青柳碧人
次に紹介するのは、青柳碧人さんの「むかしむかしあるところに、死体がありました。」です。
桃太郎×クローズド・サークル。つるの恩返し×倒叙ミステリー。花咲かじいさん×ダイイングメッセージ。浦島太郎×密室トリック。一寸法師×アリバイトリック。誰もが知っているあの昔ばなしが本格ミステリーに大変身!?
昔ばなしとミステリーを融合させるという発想の新しさから注目を集めた作品です。私もその組み合わせで内容が上手く想像できなくて、興味を惹かれて読みました。
日本人なら一度は聞いたことがあるであろう昔話を大本に、少しひねくれた解釈や設定を加えた上で本格ミステリーにするという離れ業を見事に成し遂げていて、作者の技量がすごいと思いました。
元となった昔話のストーリーや世界観もしっかりと壊さずに残しつつ、かなり複雑でしっかりと本格な事件や謎解きを入れてくるところが素晴らしかったです。ミステリーの新しい形というか可能性を示してくれた一冊だと思います。
これは日本昔話ですが、同じ作者さんの作品で西洋の童話版もありますので、この作品が気に入ったら、ぜひこちらも手に取ってみてください。
・「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」↓
ペンギン・ハイウェイ:森見登美彦
次に紹介するのは、森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」です。
ぼくは、研究が好きな小学四年生。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな出来事に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、この謎を研究することにした・・・。
珍しく京都が舞台ではない、森見登美彦さんの作品です。いつもの森見節はすっかりなりを潜めていましたが、その分、こういう物語も書けるんだ、と森見さんの才能を再確認しました。
街中に突如ペンギンが現れたり、森の中に水のかたまりのような奇妙な物体が浮かんでいたりと、かなりファンタジーなことが起こりますが、その不思議な現象が日常に上手く紛れているのが何ともシュールで、その世界観がけっこう好きでした。
何より、この物語の語り手は小学四年生の男の子。この子は少し変わり者で、知的好奇心が強く、研究が好きな、賢い男の子。この子が街に起こっている不思議な現象の解明に乗り出すのですが、この子が見ている景色はなんと新しく、世界はなんと広いことか。想像し、考え、自分で自分の世界をどんどん広げていく主人公の姿に、だらだらと生きている私ははっとさせられました。
一風変わった可愛らしいファンタジー小説を、ぜひ。
神様ゲーム:麻耶雄嵩
次に紹介するのは、麻耶雄嵩さんの「神様ゲーム」です。
神降市に勃発した連続猫殺し事件。町が騒然とする中、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだと言うのだが・・・。そして鈴木の予言の通りに殺人事件が起きる!
これは、私の中で強烈に印象に残っているミステリー小説のうちの1冊です。
この作品の特異なところは、あらすじを見ても分かるように、「神様」の存在です。鈴木太郎という子どもが神様と自称していろんなことを言い当て、予言していくという嘘みたいな話なのですが、この「神様」の存在がかなりの曲者。
この「神様」に主人公たちは翻弄され、神様が言葉を発するごとに、事件の真相はより恐ろしく、より信じがたい方向へと進んでいくのです。そして、鈴木太郎が本当に神様なのかどうか、それが本当に真相なのか、信じるか信じないかは読者に委ねられます。
元は子ども向けレーベルとして出版されたというのが信じられないほどにダークで歪んでいて、人間不信になりそうな作品です。絶対に子どもは読まない方がいいと思います笑。でもかなり強烈で衝撃的な読書体験ができると思うので、興味のある方はぜひ。
死なない生徒殺人事件:野崎まど
次に紹介するのは、「死なない生徒殺人事件」です。
生物教師・伊藤が着任した女子校には、「永遠の命を持った生徒がいる」という噂があった。話半分に聞いていた伊藤だったが、自分がその「死なない生徒」だという女生徒が現れる。しかし、彼女は程なく何者かの手によって殺害されてしまう・・・。
とても独創的な学園ミステリーです。
とにかく衝撃的な作品でした。きっと次はこうなるだろうな、これはこういうことなんだろうな、と読みながらしていた予想を、この作品はことごとく裏切ってくれました。こんなに先が読めなくて振り回された本はなかなかないです。
「永遠の命を持った生徒がいる」・・・これだけ聞くと怪談としてありそうな噂話ですが、作品を読み進めていくうちに、これが決してそんな単純でありふれた話ではないことが分かってきます。自分が何か、自分の知っている常識が通用しない世界に足を踏み入れていくような、そんな気持ちになりながら読みました。読み終わった後は、本当にしばらく呆然としていました。
常識を覆してくれる規格外のミステリーが読みたい人は、ぜひ。
邪馬台国はどこですか?:鯨統一郎
次に紹介するのは、鯨統一郎さんの「邪馬台国はどこですか?」です。
カウンター席だけの地下1階の店に客が3人。三谷教授とその助手の静香、そして在野の研究家らしき宮田。初顔合わせとなった日、「ブッダは悟りなんか開いていない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった・・・歴史を愛する3人の歴史談義は、回を追うごとに熱を帯びていく。
こちらも、歴史とミステリーがかけ合わさった、新しいタイプのミステリーです。
場所はある地下のバー。歴史を研究している3人の常連客が鉢合わせると、歴史の常識を覆すような宮田のとんでもない一言とともに、熱い歴史談義が幕を開ける・・・そんなお話です。
歴史というのは、やはりそのほとんどは実際に見た人がおらず、あくまで仮説。けれどだからこそ奥深く、どこまでも追究することのできる、ロマン溢れるものなのではないでしょうか。こちらは、改めて歴史の面白さってそういうところなんだな、と思わせてくれるようなそんな作品です。
学校で習う歴史の常識を、「いや、そうとは限らないよ、こういう考え方もできる」「ひょっとしたらこうだったかもしれないよ」と次々と覆していく宮田の推理の鮮やかさは読んでいて面白く、本当にそうだったかもな、と思わされ、わくわくしました。
話の中心になるのは、邪馬台国や明治維新、聖徳太子など、歴史に詳しくなくても知っているような一般的なテーマですが、やはりある程度詳しい知識があればより楽しめるような作品だと思います。(現に私は高校で日本史を選択していたので、楽しめました)
その可能性はすでに考えた:井上真偽
次に紹介するのは、井上真偽さんの「その可能性はすでに考えた」です。
山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶという不可解な記憶があった。探偵・上苙丞(うえおろ・じょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとするが・・・。
その斬新さでミステリ界の重鎮たちから絶賛を受けた本格ミステリーです。
カルト宗教団体の集団自殺や首無しで歩いたとされる少年の謎ももちろん非常に魅力的なのですが、この作品が他のミステリーと違うところは、探偵の役割です。
普通のミステリーでは、探偵とは、言うまでもなく、事件の真相を解き明かす存在です。たった一つしかない真実の解明に向けて頭脳を働かせる・・・それが本来の探偵ですが、この作品に出てくる探偵は違います。むしろ逆と言ってもいいです。上苙丞が目指しているのは、考え得る限りのあらゆる可能性・真相を、完璧な論理によって「否定」すること、なのです。
あまり詳しくは言えないので、どういうこと?と興味をひかれた方はぜひ、本作を読んでみてください。その発想の斬新さに驚くはずです。また、作中に示された謎自体も面白く、探偵の論理(ロジック)もすごくしっかりしているので、本格ミステリー好きにはたまらない一冊だと思います。
発想の転換により、ミステリー界に新しい風を吹き込んだ本作を、ぜひ手に取ってみてください。
まとめ
どうでしたか?
この記事では、今までになかったような、斬新で面白い設定・発想をもとに書かれた小説を17冊、紹介しました。
こんなストーリーを頭の中で考えついて、しかも一つの物語として完成させるなんて、作家さんは本当にすごいと思います。
面白そうだな、と思った作品があればぜひ、手に取ってみてください!
では、ここらで。
良い読書ライフを!
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