【傑作揃い】おすすめの直木賞受賞作10選!

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 みなさんこんにちは、らくとです。
 突然ですが、直木賞ってご存じでしょうか。
 普段本を読まない人でも、名前くらいは聞いたことがあると思います。日本に文学賞はたくさんありますが、その中でも、芥川賞と並んで有名な文学賞として知られており、それだけあって毎年レベルの高い作品が受賞しており、受賞作は巷で話題になります。
 今回はそんな歴代の直木賞受賞作から、私が特におすすめする作品を厳選して10作、紹介していきたいと思います。直木賞受賞作は読書に慣れていない人でも読みやすいものが多いため、初心者にもおすすめです。

直木賞とは?

 そもそも直木賞とはいったいどういった賞なのでしょうか?
 直木賞の正式名称は「直木三十五賞」といいます。1935年に菊池寛が友人の直木三十五を記念して設立した賞です。(ちなみにこのとき芥川賞も一緒に設立されています)。
 対象となる作品については、「大衆性をおさえた長編小説作品あるいは短編集」となっています。つまりは、社会の多くの人に受け入れられ、親しまれるような性質を持った作品に与えられる賞です。そのため受賞作は読書初心者でも読みやすいものが多くなっています。
 元々は新人による大衆小説を対象としていましたが、ある作品が大衆に受け入れられるためには、やはりその作者がある程度世間に名が知られている必要があり、新人は受賞しにくい傾向にありました。そのため、今では実質的には一定以上のキャリアを積んだ人気実力派作家に与えられる賞ということで定着しています。
 上半期と下半期に分けて年に2回、受賞作が発表されます。

直木賞おすすめ作10選

 ではいよいよ、私のおすすめの直木賞受賞作を10作、紹介していきたいと思います。
 受賞年の古いものから順に発表します。

凍える牙:乃南アサ

 まず紹介するのは、乃南アサさんの「凍える牙」です。第115回(1996年上半期)の直木賞受賞作です。

 深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年刑事・滝沢と捜査に当たる。やがて同じ獣によるとみられる咬殺事件が続発。都会で発生したこの異常な事件の裏には何があるのか?野獣との対決のときが次第に近づいていく・・・。女性刑事の孤独な闘いが読者の共感を集めたベストセラー。
 推理小説ではありますが、何よりも着目すべきなのはその圧倒的な描写力です。警察小説でありながら、その主人公の刑事は女性。男社会である警察組織の中、女というだけで偏見の目を向けられ、やりづらさを感じながらも孤独に事件を追い続ける主人公のかっこよさが、胸に響きました。最初は仲が悪かった主人公と滝沢のコンビの関係性の変化や、何人もの人を殺めた獣との対決の行方など、見所はたくさんあり、一気に読めます。今とは随分と違う平成の空気感が味わえるのもよいです。

鉄道員(ぽっぽや):浅田次郎

 次に紹介するのは、浅田次郎さんの「鉄道員(ぽっぽや)」です。117回(1997年上半期)の直木賞受賞作です。

 娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた。廃線寸前の鉄道の駅を実直に守り続ける駅長。孤独な彼に起きた優しい奇跡とは・・・映画化され大ヒットした表題作「鉄道員(ぽっぽや)」をはじめとする珠玉の短編8作品を収録。
 「鉄道員(ぽっぽや)」というと、高倉健さん主演の映画がかなり有名ですが、その原作となった短編が収められている短編集です。「平成の泣かせ屋」の異名を持つ作家・浅田次郎さんの良さがふんだんに詰まった、切なくてけれどどこか温かい、ほろっと泣ける短編集です。いろいろなことを乗り越えながら生きてきた平凡な人々の身に降りかかるささやかな奇跡を集めたこの短編集は多くの人々の心を打ち、140万部のベストセラーになりました。ちなみに私が好きだったのは「角筈にて」と「うらぼんえ」の2つでした。

理由:宮部みゆき

 次に紹介するのは、宮部みゆきさんの「理由」です。120回(1998年下半期)の直木賞受賞作です。

 東京荒川区の超高層マンションで事件は起きた。室内には中年の男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった・・・。事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者だったのか・・・。一つの事件の真相にドキュメンタリー手法で迫っていく圧巻の社会派推理小説。
 描かれるのは特に突飛な事件というわけでもなく、実際に起こりえそうで、テレビで報道されている事件の裏側を見ているようなリアリティがありました。主人公というのが特におらず、何人もの事件の関係者の視点から一つの事件を眺め、考察し、次第に真相を解明していくというドキュメンタリー方式で描かれており、その分ややこしくはありましたが、読み応えがありました。様々な人間、そしてその間で紡がれる家族というものの在り方を考えさせられる話でした。

容疑者Xの献身:東野圭吾

 次に紹介するのは、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」です。134回(2005年下半期)の直木賞受賞作です。

 天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に密かに思いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺してしまったことを知った石神は、二人を救うためにその頭脳を駆使し、完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。
 日本でナンバーワンの人気作家といっても過言ではない東野圭吾さんの代表作ともいえる作品です。湯川と石神という二人の天才による高度な頭脳戦は読者をハラハラさせ、そして、二人が元親友同士だったという事実により、切なさも感じさせます。しかし何よりも心打たれるのが、石神の靖子に対するまっすぐな愛です。愛する人のために、人はどこまでできるのか。人間の心の美しさを感じさせるラストシーンは、号泣必至です。
 このサイトの別の記事でもこの本を紹介していますので、ぜひこちらの記事も読んでいただけたら嬉しいです。【厳選】本を愛する私が選ぶ、最高のミステリー小説16選! | らくとの本棚 (rakutonohondana.com)

月と蟹:道尾秀介

 次に紹介するのは、道尾秀介さんの「月と蟹」です。144回(2010年下半期)の直木賞受賞作です。

 海辺の町、小学生の慎一と春也はヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。無邪気な儀式ごっこはいつしか切実な祈りに変わり、母のいない少女・鳴海を加えた三人の関係も揺らいでいく・・・。誰もが通る“子ども時代の終わり”が鮮やかに胸に蘇る長編小説。
 小学生が主人公でありながら、全く明るくなく、むしろ終始鬱々としています。小学生というと無邪気で何も考えずに毎日を生きているというイメージがあるかもしれませんが、この物語の登場人物たちはそうではありません。子ども故に、自分の生まれた境遇、学校、家庭に閉じ込められどうすることもできず、自分たちで作り出したちっぽけな神様に頼るしかない・・・そんな子どもたちの不自由さ、やりきれなさを巧みに描いています。多かれ少なかれ誰もが子ども時代に感じたであろうそれらは、過ぎてしまった今となってはどこか懐かしさすら覚えるものです。胸が痛くなる小説でした。

蜩ノ記:葉室麟

 次に紹介するのは葉室麟さんの「蜩ノ記」です。146回(2011年下半期)の直木賞受賞作です。

 豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷の元へと遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触れるうち、彼の無実を信じるようになり・・・感涙の時代小説!
 時代小説はあまり読まないのですが、葉室麟さんの時代小説は登場人物の凜とした姿勢、生き様に胸を打たれるものが多く、心を清らかにしたいときに手に取ることが多いです。「蜩ノ記」はそんな葉室さんの代表作とも言える作品です。そう遠くない未来に切腹することが決まっている秋谷。そんな彼の最期までの日々をそばで見守る彼の家族と庄三郎。死を前にしても、武士としての矜持を忘れないその凜とした生き様は、現代に生きる私たちの心をも強く打ちます。時代小説の傑作です。

何者:朝井リョウ

 次に紹介するのは、朝井リョウさんの「何者」です。第148回(2012年下半期)の直木賞受賞作です。

 就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎の別れた恋人・瑞月も来ると知っていたから・・・。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいることが分かり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、就活を通して、彼らの関係は次第に変化していく・・・。就活をテーマにした、心を抉る青春小説
 作者自身の若さを活かし、就活に挑む現代の若者たちの心情を残酷なまでにリアルに描いた作品でした。就活という、人生が決まる重大な局面。面接や仲間同士で交わされるうわべの言葉とは違う、心の中に隠した本音。就活を通して、または通らないことで、自分は他の大勢とは違うと思いたい若者たち。自分にも思い当たりのある部分が多く、ところどころ胸がドキッとしました。若者たちにとってゴールでもあり、しかしそれ以上にスタートでもある就職について、深く考えられる作品です。できれば就活中には読まないことをおすすめします笑。

蜜蜂と遠雷:恩田陸

 次に紹介するのは、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」です。第156回(2016年下半期)の直木賞受賞作です。

 3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない16歳の少年、風間塵。かつて天才ピアノ少女として名を馳せたが、13歳のときの母の死以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜、20歳。音大出身だが今は楽器店に勤めるサラリーマン、年齢制限ギリギリの28歳、高島明石。完璧な演奏技術と高度な音楽性で優勝候補と目される名門音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール、19歳。数多の天才たちが繰り広げる、競争という名の自分との闘い。優勝するのはいったい誰か?
 直木賞とともに本屋大賞もダブル受賞し、かなり話題となった作品です。恩田陸さんの文章表現力に圧倒されました。音楽を文章で表現するという難しいことを見事に成し遂げた素晴らしい作品だと思います。ピアノコンクールを舞台に、ぶつかり合う音楽の天才たちの才能と努力、情熱。私のように何の芸術的才能もない凡人にとってはなじみがない世界で、だからこそ圧倒されて、物語に引き込まれました。目の前に情景が鮮やかに浮かぶような、文章でしか表現できない音楽というものを見たような気がします。ぜひ読んでみてください。

ファーストラヴ:島本理生

 次に紹介するのは、島本理生さんの「ファーストラヴ」です。第159回(2018年上半期)の直木賞受賞作です。

 ある夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先の美術学校に立ち寄り、そこで父親を包丁で刺して殺したのだ。環菜の美貌もあいまって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々との面会を繰り返すことになる。そこから浮かび上がってくる環菜の過去とは・・・?
 島本理生さんというと恋愛小説の印象が強い作家さんですが、これは珍しくミステリー小説でした。娘による父親殺しというショッキングな事件。なぜそんな事件が起きてしまったのか、その背景を追っていく話です。家族というのはすごく一般的で温かいものというイメージがありますが、その実意外と閉鎖的であり、そこには自分たちだけでは気付けないような歪みがあるものなんだな、と思いました。心が静かに揺さぶられるような、そんな話でした。

少年と犬:馳星周

 次に紹介するのは、馳星周さんの「少年と犬」です。第163回(2020年上半期)の直木賞受賞作です。

 家族のために犯罪に手を染めた男。仲間割れを起こし、一人故国を目指す窃盗団の男。壊れかけた夫婦。身体を売って男に貢ぐ女。死期の迫った老猟師。震災のショックで心を閉ざした少年。闇と哀しみを抱える人々の心に寄り添うのは、通りすがりの一匹の犬・多聞だった・・・。犬を愛する全ての人に贈る感涙作
 古くから人間とともに生きてきた動物・犬。当然言葉は通じませんが、それでもどこか人間の気持ちを分かってくれているような、傷つき荒んだ人間の心をそっと癒やしてくれるような、犬にはそんな不思議な力があるように思います。一匹の犬・多聞の長い旅。そして、その途中で出会った人々との、ひとときの心温まる交流。犬と人間との間は、特別な絆で結ばれている・・・そんな風に思える連作短編集です。犬好きの人、犬を飼っている人にはぜひぜひ読んでほしい一冊です。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?
 この記事では、おすすめの直木賞受賞作を10作、紹介しました。
 直木賞というだけあってどれも小説としてのレベルが高い作品ばかりです。しかし小難しいというわけでもなく、多くの人の心を掴む、比較的読みやすい作品が多いです。
 読書をこれから始めてみようと思っている人や、本選びで失敗したくないという人は、直木賞受賞作を選んでおくと間違いないと思います。
 ぜひぜひ、この記事で紹介した10作品で気になるものがあれば、手に取ってみてください。
 最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
 では、ここらで。
 よい読書ライフを!

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