【大好きな本をネタバレなしで語る】「向日葵の咲かない夏」編

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 みなさんこんにちは、らくとです。

 今回私が語るのは、道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」です。

 道尾秀介さんの作品の中でもかなりの異色作。なんとも形容しがたく、しかし訳も分からないままなぜかぐいぐい引き込まれる・・・そんな作品です。良くも悪くも強烈に印象に残る読書体験になると思います。

あらすじ

 まず、主人公は小学四年生の男の子、ミチオです。明日から夏休みという終業式の日、彼は、欠席したクラスメイト・S君に届け物をするために、S君の家を訪ねます。そんなミチオが見たのは、首を吊って死んでいるS君の姿でした。

 動転したミチオは学校に戻り、担任の先生に自分の見たことを話します。しかし、先生と警察がS君の家に駆けつけたときには、S君の死体は忽然と消えていました

 その一週間後、死んでしまったS君、あるものに姿を変えてミチオの前に現れます。そして「僕は殺されたんだ」と訴えます

 ミチオと3歳の妹・ミカは、S君の無念を晴らすために事件を追い始めますが・・・。

ジャンルは?

 ジャンルとしてはミステリーです。若干ホラー要素も含まれるので、ホラー・ミステリーというのが一番しっくり来ます。個人的にはホラー2割・ミステリー8割という感じです。

 ただ、ミステリーではあるのですが、ストーリーといい、物語全体が纏う異様な雰囲気といい、ミステリーやホラーという型には収まりきらない作品だと思います。どちらにせよ全然正統派ではないです。

どういう人におすすめ?

 まず、「向日葵の咲かない夏」という何だか爽やかそうな題名や、「小学生の夏休み」というこれまた明るそうなワードに騙されてはいけません。これは全く爽やかでも明るくもない、むしろ終始陰惨としていて、気持ち悪く歪んだ物語です。物語として最高に面白いし、唯一無二だし、個人的に私は大好きなのですが、決して万人受けする作品ではなく、むしろ好き嫌いがはっきりと分かれる作品ではないかな、と思います。

 爽やかで明るい物語を好む人はあまり好きにはなれないと思います。その一方で、癖のある小説やどこか歪んだ、独特の世界観を持つ小説を好む人だとドンピシャではまると思います。

 あと鬱々とした雰囲気、そして展開が続く(続く、というかずーっとそんな感じ)なので、気分が沈んでいるときに読むのはおすすめしません。メンタルがやられます。

ポイント

 ・S君の死(自殺なのか、他殺なのか)

 ・近隣で起こっている犬猫殺し(全部で9匹。死体の両足が折られ、口に石鹸が詰め込まれているという共通点)・・・S君の事件と関わりが?

 ・S君の死体消失(誰が持ち去ったのか、どこにあるのか)

 ・S君の生まれ変わりと称する「あるもの」の登場

ネタバレなしの感想

 読了後すぐに思ったことは「何だこれ」でした。衝撃で頭の中がごちゃごちゃして、上手く整理がつけられなかった結果、こんな一言になりましたが、この一言には感嘆が込められています。

何だ、この話は。なんでこんな話を思いつくんだ。なんでこんな独特な世界を作り出せるんだ、この道尾秀介という作家は」・・・こんな思いが込められた「何だこれ」です。

 とにかく、全てが歪んでいる。ストーリー、登場人物、彼らが生きている世界・・・全てがどこか歪んでいて、普通ではありません。けれど、その歪みは完全に理解できない突飛なものではなく、私たちが中途半端に想像することのできる歪みで、だからこそやりきれなく、後味が悪くなるのです。

 全体的に鬱々とした雰囲気の中話が進んでいきます。次から次へと新しいことが起こり、新しい事実が出てきます。何が本当で、何が嘘か、誰が何を隠しているのか・・・誰が何をやったのか。ミチオと妹のミカ、そして生まれ変わったS君の3人は、危ない目にあったり、仲間割れをしたりしながら、少しずつ真実へと近づいていきます。真相が二転三転するので、ミステリーとしてとても面白いです。

 タイトル通り夏の話ですが、爽やかな夏ではなく、じめじめとして蒸し暑く、汗でべとべとして気持ちが悪い・・・そんな夏の話。真夏にクーラーのついていない部屋で寝て、暑さにうめきながら見る悪夢のような、そんな物語です。

 興味を持った方はぜひ手に取ってみてください。好みに合うかどうかは分かりませんが、強烈な読書体験ができることだけは約束します

 そして、読了した方に向けては、こちらの記事がおすすめです。ネタバレありで、お気に入りのフレーズやシーン、そして感想を語っているので、ぜひ読んでみてください。※絶対に読了してからお読みください。↓
 【大好きな本をネタバレありで語る】「向日葵の咲かない夏」編 | らくとの本棚 (rakutonohondana.com)

では、ここらで。
よい読書ライフを!

 

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