【初心者向け】ミステリージャンル紹介!

読書

 こんにちは、らくとです。
 私はミステリー小説が大好きなのですが、ミステリー小説と一口に言っても、その中には様々なジャンルがあります。
 ミステリーである以上は、何らかの謎を主軸に話が進んでいく点はみな同じです。けれども、その謎の種類であったり、話の展開の仕方、ミステリー以外の要素があるかどうかなどという点で、ジャンルが細かく分かれるのです。
 この記事では、それぞれのミステリ-ジャンルを紹介した上で、代表作をあげていきたいと思います。

José GraciaによるPixabayからの画像

1.ミステリーとは

 ミステリー、もしくは推理小説とは、小説のジャンルの一つです。
 何らかの謎、もしくは事件が提示され、その解決へと向かって物語が展開していく小説のことを言います。
 謎や事件といっても様々で、最もスタンダードなのはおそらく殺人事件だと思いますが、それ以外にもだの失踪や誘拐だったり、ある人物の秘密であったり、日常の中でふと起こったおかしな出来事であったりします。
 それを解決に導くのも、職業探偵であったり、警察であったり、はたまたただの一般人であったり、学生であったりと様々です。
 また、謎解き以外にもサスペンス要素があったり、青春要素があったりするものもあります。

2.ジャンル紹介

 ではいよいよ本題のジャンル紹介に入っていきましょう。

1.本格ミステリー

 1つ目は「本格ミステリー」です。
 本格ミステリーは、謎解きやトリック、探偵役の活躍などに最も重点を置いたミステリーのことです。ミステリーの最も古典的かつ基本的なジャンルと言えます。
 クローズド・サークルや館もの、密室などの不可能犯罪ものなどの多くはこれに分類されると思います。登場人物の心理描写や情景描写は控えめに、純粋に謎解きのみを楽しむミステリー小説です。
 国外で有名なのはやはり作家でいうと、シャーロックホームズを生み出したコナン・ドイル、エラリークイーンを生み出したエラリー・クイーン、またアガサ・クリスティーヴァン・ダインなどでしょうか。
 国内の作家でいうと、金田一耕助を生み出した横溝正史、明智小五郎を生み出した江戸川乱歩、また鮎川哲也泡坂妻夫島田荘司などです。
 おすすめ作品をあげておくと、エラリー・クイーンの「エジプト十字架の謎」(国名シリーズの第5作目)と、鮎川哲也の「リラ荘事件」、島田荘司さんの「斜め屋敷の犯罪」です。

2.新本格ミステリー

 2つ目は「新本格ミステリー」です。
「ん?本格ミステリーと何が違うの?」と思うかもしれません。
 新本格ミステリーは、内容の上では本格ミステリーとそれほど違いはありません。内容というよりは、それらが出版された時期によって、本格ミステリーとは区別されています。
 新本格ミステリ-とは、1980年代後半から1990年代前半にかけて出版された本格ミステリーのことを言います。
 その先駆けとなったのが、1987年の綾辻行人さんのデビュー作「十角館の殺人」です。これを皮切りに、国内で若手推理作家が次々とデビューし、多くの推理小説が売り出されました。これを「新本格ムーヴメント」と呼び、この時期にデビューした作家、出版された推理小説が「新本格ミステリー」として一つのジャンルとなったのです。
 内容の点で本格ミステリーとはほとんど違いがないと書きましたが、それでもやはり、少しの違いはありました。それ以前の本格ミステリーは推理過程にしてもトリックにしても正統派のものが多く、少し硬い印象でしたが、新本格ミステリーはそれに比べるとやや緩くなったというか、本格ミステリーというものの幅が少し広がったのではないかと個人的には思います。
 代表的な作家は綾辻行人さん、有栖川有栖さん、法月綸太郞さん、山口雅也さん、麻耶雄嵩さん、京極夏彦さんなどなどです。(他にももっとたくさんいます。)
 おすすめ作品は、綾辻行人さん「十角館の殺人」(これを始めとする館シリーズは全部おすすめです)、有栖川有栖さん「孤島パズル」、京極夏彦さん「姑獲鳥の夏」(これを始めとする百鬼夜行シリーズは全部おすすめです)です。

3.社会派ミステリー

 3つ目は「社会派ミステリー」です。
 社会派ミステリーとは、事件の背景に社会的なテーマが存在するミステリーのことです。本格とは違い、ミステリーでありながら、同時にリアリティも重んじているところが特徴です。
 ミステリーなのでもちろん事件や謎は登場しますが、社会派ミステリーでは、その事件や謎を通して社会の現実を描くことで、何らかの問題提起を社会に対して行っていることが多いです。
 社会派ミステリーを世に広めたとして有名なのは松本清張で、なかでも特におすすめなのは「点と線」です。
 比較的最近の作品でいうと、借金・破産をテーマにした宮部みゆきさんの「火車」が社会派の傑作だと思います。また、児童虐待や子どもの貧困など、平成のさまざまな社会問題に切り込んだ、葉真中顕さんの「Blue」もおすすめです。

4.ハードボイルド

 4つ目は「ハードボイルド」です。
 ハードボイルドとは、元々、ミステリーに限らず、暴力的・反道徳的な内容であっても感情的・批判的な描写を加えずに、登場人物の行動だけを淡々と描くという描写方法・文体のことを指します。
 ミステリーのジャンルとしてのハードボイルドは、行動派の私立探偵・もしくは刑事などが主人公となって、淡々と、しかし執拗に事件を追っていくミステリーのことを指します。
 ただ、感情を表現しないだけで、主人公に心がないというわけではなく、クールで淡々としているように見えながら、行動の端々に優しさが見え隠れしていることも多いです。そこから、ハードボイルド=かっこいい男というイメージが根付いています。
 正直に言いますと、私はこのジャンルにはあまり詳しくないのですが、それでもハードボイルドといえばぱっと思い浮かぶのが、「フィリップ・マーロウ」という名前です。こちらはレイモンド・チャンドラーが生み出した私立探偵で、「長いお別れ」などの作品が有名です。
 日本のハードボイルド小説でいいますと、原寮さんの「沢崎シリーズ」であったり、昔の作品ですが大藪春彦さんの「野獣死すべし」などがあり

5.サスペンス・ミステリー

 5つ目は「サスペンス・ミステリー」です。
 実はサスペンスだけでも、ミステリーとは別に、一つの小説のジャンルとして確立しています。つまりサスペンス・ミステリーとは、サスペンスの要素があるミステリー小説ということになります。
 「サスペンス」とは、予期せぬ事件や事故などに巻き込まれ、その危機から脱する登場人物の心境を追うことで、読者に緊迫感・恐怖感を与える小説のことです。読者はこの先何が起こるのか展開が読めず、ハラハラドキドキしながらページをめくります。
 そもそもミステリー自体サスペンスとは相性が良く、多くのミステリー小説には少なからずサスペンスの要素がありますが、中でもその比重が多い作品をサスペンス・ミステリーといいます。
 サスペンス・ミステリーとしておすすめの作品は、ウィリアム・アイリッシュの「幻の女」、そしてピエール・ルメートルの「その女アレックス」です。
 国内でいうと、岡嶋二人さんの「そして扉が閉ざされた」や知念実希人さんの「仮面病棟」がおすすめです。

6.警察小説

 6つ目は「警察小説」です。
 こちらはその名の通り、警察官・刑事を主人公にして、警察の捜査活動を描くことを主眼としたミステリー小説のことです。主人公が、警察という組織の中で、他の捜査官とともに事件を地道に追って真相に迫っていく様をリアリティを持って描いています。
 おすすめ作品は、エド・マクベインの「87分署シリーズ」、乃南アサさんの「凍える牙」、横山秀夫さんの「第三の時効」です。

7.リーガルミステリー

 7つ目は「法廷ミステリー」です。
 こちらは、法廷を舞台としたり、もしくは裁判や司法制度そのものをテーマとしたミステリー小説のことです。法廷ミステリーは、弁護士や検察官の弁論や証拠調べなどの過程を経て徐々に真相が明らかになっていく様子が面白く、また、容疑者という一人の人間の命運を決める裁判・司法という制度について考え直す機会をくれます。
 おすすめ作品は、あまり有名ではないのですが、佐藤青南さんの「ジャッジメント」です。野球と裁判をかけあわせた作品で、法廷を舞台としておりながらそれほど重々しくなく、爽やかに読めます。
 また、冤罪をテーマにした貫井徳郎さんの「灰色の虹」や、死刑制度をテーマにした高野和明さんの「13階段」などもおすすめです。

8.日常の謎

 8つ目は「日常の謎」です。
 こちらは別名、「コージーミステリー」や「人の死なないミステリー」とも呼ばれます。
 日常の謎とは、殺人等の特別な事件や凶悪な犯罪などは起こらず、日常の中でふと起こる不思議な出来事や些細な事件などを推理し、その意味や真相を解き明かすミステリー小説のことです。
 他のミステリー小説に比べてかなりライトで読みやすいジャンルです。きちんとした推理の場が設けられることもなく、あくまで登場人物達の日常の会話の一部分として推理が進められることが多く、また、探偵役も刑事や職業探偵ではなく、ただの一般人であることがほとんどです。
 そのため、重々しいものは読みたくない、人が死ぬ話は嫌だ、という人にはぴったりのミステリーだと思います。
 代表作としては、「空飛ぶ馬」で始まる、北村薫さんの「円紫さんと私シリーズ」でしょうか。
 個人的には、加納朋子さんの作品は日常の謎が多いのですが、どれも謎解きが秀逸で、かつ心温まるようなものばかりなので、おすすめです。また、倉知淳さんの「猫丸先輩シリーズ」も好きです。(ただ、このシリーズの1作目と2作目は日常の謎ではなく、殺人事件が起こる普通のミステリーです。)

9.青春ミステリー

 9つ目は「青春ミステリ-」です。
 青春ミステリーとは、高校生や中学生などの少年少女を主人公にし、その多感な時期特有の切なさや甘酸っぱさ、悩みや迷いなどを事件や謎に絡めて描くミステリー小説のことです。
 こちらもライトなジャンルで、一つ前に紹介した日常の謎とセットであることが多いですが、殺人事件が起こる場合もあります。しかし、殺人事件であっても、事件の謎解きというよりは、登場人物たちの心情にスポットが当たることが多いです。
 今まさに中学生・高校生と青春の中にいる人々にとっては、読んでいて共感できる部分が多いでしょうし、そんな時期はすでに過ぎてしまったという大人でも、自身の青春時代を懐かしみながら読むことができます。
 おすすめは、米澤穂信さんの「古典部シリーズ」です。青春ミステリーの代表作といっても過言ではないと思います。こちらは「氷菓」というタイトルでアニメ化されており、そちらもとても人気です。同じくシリーズものでは、初野晴さんの「ハルチカシリーズ」も青春と謎解きのバランスが程よくておすすめです。
 シリーズもの以外でおすすめなのは、青崎有吾さんの「早朝始発の殺風景」、若竹七海さんの「スクランブル」、貫井徳郎さんの「明日の空」です。

10.ユーモア・ミステリー

 10個目は「ユーモア・ミステリー」です。
 ユーモアミステリーとは、読んでいてくすっと笑えるようなユーモアを交えて話が進むミステリー小説のことです。ある程度のユーモアは小説には必要ですが、そのユーモアの度合いが強いミステリーのことを特にユーモア・ミステリーといいます。
 こちらもかなり読みやすいジャンルとなっています。お堅い雰囲気が苦手という人はぜひ読んでみてください。
 ユーモアミステリーと言えば、何と言っても東川篤哉さんでしょう。「謎解きはディナーの後で」や「烏賊川市シリーズ」「鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ」など、たくさんのユーモアミステリーを書いています。どれも笑いのセンスがキラリと輝いていて、くすくすと笑いながら読めます。そして笑いだけでなくミステリーとしても秀逸で、読み応えがあります。
 他にも、黒崎緑さんの「しゃべくり探偵」は、登場人物が漫才のような会話をしながら推理を展開していくので、とても面白いです。海外のものでは、クレイグ・ライスさんの「マローン弁護士シリーズ」は、登場人物たちのドタバタ劇が面白くておすすめです。

11.イヤミス

 11個目は「イヤミス」です。
 イヤミスとは、「嫌な気持ちになるミステリー」です。謎解きや事件の過程で、人間が心の奥底に隠している嫌な部分・黒い部分が曝け出されていく作品が多く、読み終えた後になんともすっきりしない、嫌な気持ちになります。それでも、見たくないと思いながらも、そういうものに惹かれてしまうのが人間の性なのかもしれません。
 代表作家としては、湊かなえさんが有名です。イヤミスを世に広めた作家さんといっても過言ではないと思います。特におすすめなのは、「告白」と「贖罪」です。
 また、芦沢央さんのイヤミスもリアルな人間を描いていて、好きです。「許されようとは思いません」、「汚れた手をそこで拭かない」、この2作品が特におすすめです。
 ただ、個人的に最も嫌な気持ちになった(いい意味で)イヤミスは、降田天さんの「女王はかえらない」です。

3.まとめ

 どうだったでしょうか?この記事では11のミステリージャンルを紹介しました。
 細かく分けたらもっとたくさんのジャンルがあるのですが、ここでは特に私がメジャーだと思うジャンルを取り上げました。
 まだまだ語り足りない、紹介し足りない作品などもたくさんあるので、またジャンルごとに個別に作品を紹介する記事を書こうと思います。
 では、ここらで。
 いい読書ライフを!
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました