【初心者向け】ミステリーによく出てくる用語を具体的に解説します!

読書

 こんにちは、らくとです。
 私は読書が大好きですが、なかでも特に好きなのがミステリー小説です。
 元々父がミステリーマニアで、実家の自分の部屋に眠っていた、若い頃に集めた国内外のミステリー小説を、どっさりと私に譲ってくれたのがきっかけでした。それを読んだ私は、すっかりその面白さの虜になり、様々なミステリーを読み漁るようになりました。
 今回の記事では、そんな私が、ミステリーを読んでいるとよく出てくる用語を初心者向けに解説していきたいと思います。

1.そもそもミステリーとは

 ミステリーというのは、小説のジャンルの一つで、作中に何らかの謎が提起されており、その解決に向けて話が進んでいく小説のことをいいます。推理小説ともいいます。 
 ミステリーというと、皆さんの頭に真っ先に思い浮かぶのは「シャーロック・ホームズ」かもしれません。大体のミステリーには、彼のように謎を解き明かす存在である探偵役と呼ばれる役割の人がいます。日本の代表的な探偵と言えば「金田一耕助」でしょうか。この辺りは、本を読まない人でも知っている人は多いでしょう。
 そんなミステリーですが、読んでいるとミステリー好きにしか分からないような用語が出てくることがあります。これからミステリーを読み始める人がもっと楽しめるように、具体的な作品名を挙げながら、その用語の解説を行っていきたいと思います。
 

Reimund BertramsによるPixabayからの画像

2.用語解説

 それでは、用語解説に進みたいと思います。この記事では11個の用語を解説していきます。

1.密室

 1つ目は「密室」です。
 こちらはミステリー用語ではありますが、ミステリーを読まない人でも知っている超基本的な単語だと思います。
 密室とは、一言でいうと「閉ざされた部屋」です。最も典型的なのは内側から鍵が掛かっている場合です。「内側から鍵のかかった部屋で、人が殺されている。犯人は被害者を殺した後、どうやってその部屋から脱出したのか?」この場合、これが、その事件において解き明かすべき謎となります。鍵以外にも、家具などで内側からバリケードがされている場合もあります。
 また、鍵やバリケードなど物理的にドアが開かない場合以外にも、いわゆる「衆人環視の密室」というものもあり、それはその部屋の出入り口に人の目があった場合です。「そのドアからは誰も出入りしていないのに、中で人が殺されている。犯人は誰にも見られることなく、どうやってその部屋から脱出したのか?」これが衆人環視の密室です。
 代表的なこれら以外にも、様々な手法や状況から密室状態というのは作られます。
 密室を扱ったミステリーは国内外にたくさんあります。中でも私が特に感銘を受けた密室トリックは三つあり、横溝正史の「本陣殺人事件」、島田荘司さんの「斜め屋敷の犯罪」、ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」です。特に「三つの棺」は、作中の探偵役が密室トリックを分類して解説をする「密室講義」と呼ばれる章が有名なので、ぜひ一読してみてください。

2. アリバイ

 2つ目は「アリバイ」です。
 アリバイとは、元はラテン語に由来しており、日本語に訳すると「現場不在証明」となります。こちらも基本的な単語です。
 アリバイは、犯人が、自分自身が容疑から逃れるために用いるトリックの一つです。犯行があったとされた時間、自分は全く違う場所にいたという証拠を示すことで、自分には犯行が不可能だったと主張するのです。このアリバイトリックを見抜くことを「アリバイ崩し」といいます。
 こちらも昔からよくミステリーのトリックとして扱われてきたものです。個人的にはこれ単体を扱った長編ミステリーはそれほど多くない印象ですが、有名作でいうと松本清張の「点と線」が傑作だと思います。長編では少ないかもしれませんが、ミステリーの短編や一話完結ものの刑事ドラマなどでメインのトリックとして使われたり、メインではないけれど、長編ミステリーでも、犯人の小技として用いられることが多いトリックです。

3.クローズド・サークル

 3つ目は「クローズド・サークル」です。
 こちらもミステリーの基本用語です。何らかの事情から、外界と連絡が取れない状況に置かれることをいい、多くの作品ではその状況下で殺人事件が起きます。
 例えば、「絶海の孤島」「吹雪の山荘」などが典型的でしょう。他にも船や列車の中であったり、崖崩れや橋の崩落などで山奥の屋敷に閉じ込められる・・・など、様々な場合があります。
 クローズド・サークルものの面白いところは、登場人物が限定されるところです。文字通り、「閉ざされた輪」の中にいる人間から被害者が出て、かつその中に犯人もいるのです。それに加えて、警察の介入を排除できる、というのももう一つの特徴です。警察は優秀な機関ですが、本格ミステリーにおいては野暮な存在として扱われることが多いです。警察の捜査ではなく、純粋な探偵役の推理のみによって事件が解き明かされることを、本格ミステリーの読者は望んでいるからです。
 クローズド・サークルものの代表的作品と言えば、エラリー・クイーンの「シャム双子の謎」や、綾辻行人さんの「十角館の殺人」があります。最近では今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」が、かなり特殊なクローズド・サークルもので面白いので、ぜひ読んでみてください。

4.読者への挑戦状

 4つ目は「読者への挑戦状」です。
 推理小説においては、ときどき、探偵役が犯人を指名する前に一旦物語を止めて、作者から読者に向けて、「誰が犯人なのか当ててみせよ」というメッセージが挟まれることがあります。これが「読者への挑戦状」です。
 これは正統派の本格ミステリーにおいてよく見られるものです。挑戦状を置くからには、読者に対してフェアであることが求められます。そのため、挑戦状では、多くの場合、「読者が、探偵役と同じ推理過程を辿って犯人を当てることができるだけの情報は全て開示されている」ということが示されます。
 読者の中で、実際にここで本を置いて犯人を当てるための推理をする人がどれくらいいるのかは分かりませんが(私は早々と諦めてさっさとページをめくるタイプです)、実際に推理をしようとしまいと、これが間に挟んであるだけでわくわくする、という本格ミステリーファンも多いのではないでしょうか。
 「読者への挑戦状」のあるミステリ小説としては、エラリー・クイーンの「国名シリーズ」(「スペイン岬の謎」まで)、有栖川有栖さんの「学生アリスシリーズ」(全長編)が挙げられます。リンクを一冊目のみ貼っておきます。

5.見立て殺人

 5つ目は「見立て殺人」です。
 見立て殺人とは、そのままの意味で、何かに見立てて死体や現場が装飾された殺人事件のことを言います。
 見立てられる何か、というのは童謡の歌詞や俳句、小説の筋書き、言い伝えなどであることが多いです。海外ものではマザーグースがよく使われます。
 見立て殺人は犯人の意図が分からず、その不気味さが読者を物語の中へと引き込みます。連続殺人になることが多く、小説の登場人物たちの恐怖を煽る効果もあります。
 有名なものでは、ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」(マザーグース)、横溝正史の「悪魔の手鞠歌」(童謡の歌詞)、個人的に私が好きなのは、綾辻行人さんの「霧越邸殺人事件」(童謡の歌詞)です。

6.ワトソン役

 6つ目は「ワトソン役」です。
 こちらは、物語の中で、探偵役の相棒かつ語り手を務める人物のことを言います。
 「ワトソン」というのはアーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場する、ジョン・H・ワトソンという人物のことで、ホームズの相棒として有名です。また、ホームズの物語は、ワトソンが、ホームズが解決した事件を記録したものとして書かれており、その意味で、ワトソンは物語の語り手でもあります。
 このおそらく世界一有名な探偵・ホームズとその相棒ワトソンにあやかって、推理小説の世界では、探偵役の相棒,かつ物語の語り手を務める登場人物をワトソン役というようになりました。
 ワトソン役が出てくる推理小説としてぱっと思い浮かぶのは、島田荘司さんの「御手洗潔シリ-ズ」でしょうか。並外れた推理力を持つ変人探偵御手洗潔と、彼を隣で支えて、かつ彼の物語を記録する石岡和己のコンビは、まさにホームズとワトソンを彷彿とさせます。御手洗潔シリーズとホームズシリーズのおすすめのリンクをそれぞれ1冊ずつ、貼っておきます。

7.倒叙ミステリー

 7つ目は「倒叙ミステリー」です。
 倒叙ミステリーとは、物語の冒頭で犯行シーンが描かれ、読者に犯人が分かってしまうタイプのミステリーのことです。
 「犯人が分かっちゃったら面白くないじゃん!」と思うかもしれませんが、倒叙の面白いところは、多くは犯人目線で描かれるため、犯人側から事件を眺めることができるということです。しかし、読者側も全てが分かっているわけではなく、犯人が容疑を逃れるために使ったトリックの詳しい部分は知らないことが多いので、読者は、「いったいこの犯人はどんな手を使ったのか」ということを考えながら読むことになります。同時に、犯人の心情などが深く掘り下げられるので、読者が犯人に感情移入してしまうことも多いです。
 倒叙ものとして有名なのは、テレビドラマでは「古畑任三郎シリーズ」です。長編では、直木賞を受賞した、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」や貴志祐介さんの「青の炎」などがあります。

8.叙述トリック

 8つ目は「叙述トリック」です。
 こちらは、推理小説におけるトリックの一種ですが、犯人が使うものではなく、作者が読者に対して仕掛けるトリックです。
 一言で言うと「文章で騙す」ということです。作者がわざと曖昧な表現を用いたり、必要なことを言わなかったりすることで読者に勘違いをさせるのです。普通の人間は多かれ少なかれ先入観というものを持っているので、よほど注意深い人でない限りは高確率で騙されます。ラストでその勘違いが明らかになったとき、まさに世界がガラッとひっくり返ったような衝撃を受けることになります。
 例えば、「この登場人物は女(男)だと思っていたけど実は男(女)だった」というジェンダートリックとか、「この人とこの人は実は同一人物だった」とか、逆に「この人とこの人は実は別の人間だった」とか、あとは作中作だったり、様々な騙し方があります。
 ここで叙述トリックが使われている具体的な作品名をあげてもいいのですが、私は、叙述トリックは全く疑っていない状態で読んだ方が、騙されたと分かったときの衝撃を楽しめると思っています。あらかじめ叙述トリックが使われているということを知って読むと、変に疑ってしまい、叙述トリックの醍醐味である明かされたときの衝撃が減ってしまうかもしれません。そのため、具体的な作品名はここでは控えることにします。

9.安楽椅子探偵

  9つ目は「安楽椅子探偵」です。
 安楽椅子探偵とは、実際に事件の現場に赴くことはせず、室内にいたままで、来訪者の話を聞いたり新聞記事を読んだりするだけで、事件の真相を推理する探偵のことを言います。
 実際に事件の現場を見ていないという点で、探偵役にはかなり不利な条件下ですが、それをものともせず、探偵役が理路整然とした推理で真相の辿り着いたときは、「お見事!」と言いたくなります。
 安楽椅子探偵ものとしておすすめなのは、海外でいうと、短編ですが、ハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」です。これは探偵役が、少なすぎる情報から見事な推理過程を辿って驚きの真相を導き出します。短編ながら上質なミステリーです。
 国内では、東川篤哉さんの「謎解きはディナーの後で」シリーズがおすすめです。こちらも刑事のお嬢様から事件の話を聞いた執事が見事に真相を言い当てるという形を取っています。(たまに現場に赴くこともあります。)

10.フーダニット・ハウダニット・ホワイダニット

 10個目は「フーダニット・ハウダニット・ホワイダニット」です。
 これはそれぞれ別の意味ですが、セットのようなものなので、1項目にまとめました。
 まず「フーダニット」ですが、これは「Who done it ?」の略で「誰がやったのか」という意味です。こちらは、「犯人当て」に主眼が置かれたミステリーのことをいいます。犯人の名は最後に明かされ、そこが推理のゴール地点です。おそらくミステリーにおける最も基本的な形だと思います。おすすめはたくさんあるのですが、クローズド・サークルのところでも紹介した綾辻行人さんの「十角館の殺人」が一つ頭抜けていると思います。
 次に「ハウダニット」ですが、これは「How done it ?」の略で「どのようにしてやったのか」という意味です。こちらは「トリック」に主眼が置かれたミステリーのことを言います。犯人が使ったトリックを暴くのが一番の目的で、犯人はトリックが分かれば連鎖的に判明する場合が多いです。ハウダニットでは、密室などの不可能犯罪を扱うことが多いと思います。おすすめは、密室のところでも紹介しましたが、ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」です。
 最後に「ホワイダニット」ですが、これは「Why done it ?」の略で「どうしてやったのか」という意味です。こちらは「動機」に主眼が置かれたミステリーのことを言います。犯人がなぜそのような犯罪を行ったのか、または行わなければならなかったのか、その背景・理由を丁寧に描いており、社会派のミステリーに多いです。おすすめは宮部みゆきさんの「火車」です。

11.館もの

 11個目は「館もの」です。
 館ものとは、その名の通り、奇妙な建物を舞台に事件が起こる推理小説のことを言います。館もののミステリーは、タイトルに「〇〇館の殺人」などその建物の名前が入っていることが多いです。「館」以外にも「〇〇屋敷」「〇〇邸」「〇〇城」「〇〇荘」などの場合もありますが、それらをひっくるめて「館もの」といいます。
 館ものは私も大好きなのですが、何が好きなのかというと、やはりその雰囲気だと思います。館ものに出てくる建物は多くは人里離れたところに建っており、そしてとても大きくて込み入った構造をしていて、そこに住んでいる人々は曰く付きで・・・そして、そこで恐ろしい事件が起きるのです。その日常とはかけ離れた感じが、私たち読者をわくわくさせるます。また、館ものは、クローズド・サークルとセットになりがちだという印象があります。
 館もののおすすめはなんといっても、綾辻行人さんの「館シリーズ」です。全て「〇〇館の殺人」というタイトルで、今9冊目まで出ています。題名通り、どれも奇妙な館で起こる殺人事件を描いており、驚愕の真相が待ち構えています。その中でも私のおすすめは「十角館の殺人」(この記事で三回目の登場笑)、「時計館の殺人」です。

3.まとめ

 どうでしたか?
 実はミステリー用語はもっとあるのですが、この記事ではより重要だと思われるこの11個を紹介しました。私自身ミステリーが大好きなので、少し熱が入ってしまったかもしれません。
 これからミステリーに挑戦してみようと考えている人は、ぜひこの記事で紹介した本を手に取って見てください。ここで紹介したのはみんな代表的な作品なので、間違いなく面白いです。
 最後まで見てくださってありがとうございました。
 では、ここらで。
 よい読書ライフを!
 

コメント

  1. ねこじた より:

    私も読書が趣味で、ミステリが最も好きなジャンルです。
    館もの、クローズドサークル、良いですね。
    綾辻行人さんの館シリーズ、あと1作品出るんじゃなかったでしたか?
    叙述トリックも好きです。作品名は明かしませんが、綾辻行人さんの友達のアノ方のアノ作品はゾッとする程騙されました。
    では、よい読書、よいミステリライフを。

    • rakuto より:

      ねこじたさん、コメントありがとうございます!このサイトで初めての読者さんからのコメントなので、とても嬉しいし、ありがたいです。
      館もの×クローズドサークルは鉄板ですよね。館シリーズはあと1作品で合ってます!「双子館の殺人」というタイトルらしいですね。刊行されるのが待ち遠しくて、それを楽しみの一つに生きてます。
      叙述トリックも大好きです。騙されてた!と分かったときが最高です。綾辻さんの友達の方の作品というのは・・・有名なもので心当たりが一冊ありますが、違っていると困るので、心の中だけでこれかな?と思っておきますね。
      これからも記事を読んでいただけたら嬉しいです。よいミステリライフを。

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